食事療法で再発を防ぐ方法はあるか?

回答者:上野 秀樹
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2012年7月
更新:2013年11月

  

今年、ステージ2の膵がんにかかりました。しかし、転移などはなく、手術により切除しました。けれども、本などの情報から再発の可能性が高いとわかりました。そこで、自分なりに再発を遠ざける取り組みをしたいと考えております。食事療法で何かよい方法はないでしょうか。

(千葉県 女性 63歳)

A 術後のジェムザール治療が唯一の治療法

ご質問内容のように、膵がんは手術でも完全に治すことが難しい病気です。再発は手術後比較的早い時期にみつかることが多く、手術後1年以内の再発が約半数を占めています。

その後、時間が経過するにつれ再発のリスクは減っていき、5年以上経過すると完治した可能性が高くなります。ただし、5年以降の再発も報告されており、少なくとも術後10年ぐらいまでは再発の可能性があると考えられています。

手術でがんを取り除いても、なぜ再発は起こるのでしょうか? それは、手術のときに取り除けなかった目にみえないがん細胞が増加した場合に、再発が起こると考えられています。したがって、膵がんの手術後に再発するかどうかは、手術を受けた時点の状況(切除範囲を超えてがん細胞が存在していたかどうか)が重要であり、それによって再発するかしないかが、決まってきます。

膵がんは、がんが残ってしまった場合には再発を防ぐことが難しい疾患ですが、予後を改善するためにこれまでにさまざまな試みが行われてきました。そのなかでも、手術に化学療法や放射線療法などを付加する「補助療法」と呼ばれる治療が近年成果をあげており、膵がんでは、手術後にジェムザールという抗がん剤を一定期間使用すると再発が遅くなり、生存期間が長くなることが示されています。

現時点では、膵がんに対する補助療法の効果には限界があるため、補助療法を受けてもがんの再発を完全に防ぐことは難しいかもしれません。

しかし、手術後の補助療法は、予後改善に役立つことが臨床試験によって証明された唯一の治療法ですので、主治医の先生とご相談されることをお勧めします。

また、最近では他の抗がん剤を使用したり、術前に実施したりする新たな補助療法の試みも積極的に行われています。

一方、ご質問いただきました食事療法などの取り組みに関しては、残念ながら膵がんに対するエビデンス(科学的根拠)が証明されたものはありません。確かに、糖尿病や高血圧などのように、食事療法や運動療法が大変有用な疾患もあります。

しかし、体に残された膵がん細胞に対しては、これらの治療の効果は期待できないという考えが、現時点では一般的です。

以上より、再発の不安は大きいと思いますが、できるだけ普段と変わらない日常生活を送られることをお勧めします。

膵がんの術後は、消化不良による下痢や高血糖を起こしやすいことから、それらの症状に対する配慮(例えば油っぽいものや甘いものを取り過ぎないなど)はもちろん大切かと思いますが、根拠のない生活制限を行う必要はありません。

ジェムザール=一般名ゲムシタビン

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