子宮体がん1B期の診断。手術の後遺症が心配

回答者:関口 勲
栃木県立がんセンター 婦人科・第一病棟部長
発行:2010年6月
更新:2013年12月

  

子宮体がんと診断されました。がんは子宮体部に限局していて、1B期とのことです。子宮の全部と卵巣、卵管をとり除くとのことです。周囲のリンパ節もとり除く予定で、手術による後遺症が心配です。

(埼玉県 女性 49歳)

A リンパ節郭清には負の側面も。欧州の臨床研究では「意味なし」

リンパ節の手術で問題となるのは、術前のCTでリンパ節転移なしと判断された場合でも実際にリンパ節を切除して病理組織検査をしてみると転移が発見されることがあるということです。

現在、リンパ節転移があるかないかの最も正確な診断方法はリンパ節を摘出し、病理組織検査をすることです。リンパ節転移があると3C期となり、進行がんという判断になり、術後の放射線療法や抗がん剤治療が必要になります。

一方、リンパ節の手術には負の側面もあります。おなかの傷が、大きくなります。手術が子宮摘出だけなら傷跡はおへそから下10センチほどですが骨盤リンパ節をとるとおへそから下15センチと長くなり、傍大動脈リンパ節もとるとおへそから上10センチが加わり、合計25センチほどの傷跡が残ります。また、手術時間が長くなる、出血が多くなる、術後の腸閉塞などの合併症が増える、手術の侵襲からの回復に時間がかかる、長期的には下肢のリンパ浮腫が起こりやすくなる、などです。臨床的に1番大きな問題は、リンパ浮腫だと思います。

リンパ節郭清、骨盤リンパ節切除、リンパ節生検などリンパ節の取扱いは婦人科医の間でも議論の分かれるところです。リンパ節転移のおおよその頻度は1A期では0パーセント、1B期では5パーセント以下、1C期では20パーセント以上です。1A、1B期でのリンパ節手術は、転移がないことを確認するといった意味合いが強いと思います。

類内膜腺がんで、分化度1(G1)、MRI診断で筋層浸潤が2分の1以下、CTで子宮以外に明らかな病変が確認できない、といった状況であればリンパ節の手術は省略するという選択も可能であると思います。 このような手術をする場合、手術中に摘出子宮を観察して肉眼的に筋層浸潤を確認することや、手術中の迅速病理検査で筋層浸潤を確認するという方法が望ましいと思います。

日本婦人科腫瘍学会が発行している『子宮体癌治療ガイドライン』では、1B期以上はリンパ節郭清が推奨されています。

一方、最近の欧州の臨床研究では1期の標準的手術は子宮全摘と両側付属器切除術で、リンパ節の手術は意味がないとの結論です。これはリンパ節を切除しなくてもすべての患者さんが助かるということではなく、リンパ節の手術をしてもしなくても再発して亡くなる患者さんは同程度だったという意味です。インパクトの大きな臨床研究です。

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