絨毛がんからの肺転移。化学療法の副作用がつらいが続けるべきか

回答者:関口 勲
栃木県立がんセンター 婦人科・第一病棟部長
発行:2010年12月
更新:2013年12月

  

昨年12月に初めての妊娠で胞状奇胎と言われ、今年2月に胞状奇胎を取り除く手術を受けたところ、侵入奇胎の絨毛がんでした。CT検査の結果、肺転移が見つかり、化学療法としてメソトレキセート(一般名メトトレキサート)の投与を、5日間1クールとして計7クール受けました。幸い、HCGは7月以降、ずっと正常値で、現在はCTでも肺転移の影が消えています。しかし、化学療法では、腹痛や口内炎、湿疹といった副作用に悩まされています。主治医から「念のため、12クール続けたい」と言われていますが、中断したり、休薬したりしないほうがいいでしょうか。また、治療後の再妊娠は可能でしょうか。

(千葉県 女性 38歳)

A 副作用に耐えられるなら、続けたほうがよい

妊娠すると、胎児に栄養や酸素を送るため、胎盤が形成されます。胎盤を構成する細胞が絨毛細胞で、この細胞の異常増殖が絨毛性腫瘍です。胞状奇胎とは、絨毛が増殖してブドウの房のような状態になるため、ブドウ子とも呼ばれますが、これが最も多く、ほとんどの方は子宮内腫瘍の掻爬で治ります。胞状奇胎が子宮の筋層にまで浸潤しているものを侵入奇胎といい、子宮摘出術や抗がん剤治療が必要です。まれに絨毛ががん化した絨毛がんが発症しますが、薬物療法が奏効するため、一般に予後も比較的良好です。

ご質問の化学療法の回数については判断が難しいところですが、HCGが正常値となってから、2~3クール追加するのが一般的と思われます。抗がん剤治療は、途中で間隔を空けることなく、最終まで継続することが理想的です。ただし、白血球や血小板減少、その他の副作用によって、やむを得ず間隔を空けることはあります。12クールの予定であれば、副作用が許容できるなら、連続して治療することが望ましいと思います。

再妊娠についてですが、絨毛性腫瘍の再発の検査は、主に尿中のHCGで行うので、妊娠によってHCGが増えた場合、絨毛性腫瘍の再発かどうかが判断できなくなるという問題が生じます。このため、抗がん剤治療で完治したと判断できる状態から、一定期間の避妊を勧められます。

通常は1~2年の避妊が望ましいようですが、早く子供が欲しい場合などは、状況によっては半年程度の避妊後に妊娠を許可する場合もあるようです。

絨毛がんの治療に使うメソトレキセートやダクチノマイシン(一般名アクチノマイシンD)などの抗がん剤で排卵障害になり、不妊症になることはまずないと考えられます。

HCG=ヒト絨毛性ゴナドトロピン。妊娠すると胎盤から分泌されるホルモンで、絨毛性腫瘍の細胞も産生するため、絨毛がんの腫瘍マーカーとして用いられる

掻爬=医療目的で子宮内膜の除去、あるいは組織の採取を行うこと

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