ドイツがん患者REPORT 79 ワクチンはいつ接種できる?

文・イラスト●小西雄三
発行:2021年5月
更新:2021年5月

  

懲りずに夢を見ながら」ロックギタリストを夢みてドイツに渡った青年が生活に追われるうち大腸がんに‥

日本のテレビやラジオのネット配信は、海外ではブロックされていて聴けないものがほとんどです。そこでラジオ局はYouTubeに流してくれています。日本では早朝6時から8時までのラジオ番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」の短縮版(30分)を、平日のほぼ毎朝聴いています。日本とは8時間の時差がありますが、僕も寝起きに聴くようにしています。

今年の1月だったと思うので少し古くなりますが、「いくつかのメディアが『反ワクチン』の記事を載せたが取り消した」というニュースを取り上げていました。

その日のゲストは作家・ジャーナリストの佐々木俊尚という人でした。毎日新聞の記者からフリーになった人だそうで、物の見方に僕と共通点を見つけることが多いと感じています。

読者をミスリードさせるタイトル

「1,726人の医師の本音 すぐにワクチン接種を望むのはわずか3割!」これはアエラの広告。デイリー新潮は「コロナワクチンを絶対に打ちたくないわけ」。毎日新聞は「女子高生100人に聞いた ワクチン接種を6割が受けたくないわけ」という記事を出す。TBSは「ワクチン接種 医療現場から不安の声。自分たちは実験台? という看護師の不安の声」同じ病棟の看護師7割が接種をしないことを選んだと放送。

こうした報道に医療現場から大反発が起きて、記事の取り消しが続出したと。さすがに、今これはまずいと思ってのことだったのでしょう。

アエラも「種類により、接種は6割」に差し替え。医師の3割は自分たちよりも必要とする人を優先してほしいと言い、進んで接種が3割という内容の記事が、どうして医者の7割がワクチン接種を拒否と受け取られるような見出しになったのでしょうか。

背景には2010年代にあった「子宮頸がん(HPV)ワクチン反対活動の〝成功体験〟があるのでは」とゲストの佐々木さん。副反応を大きく報じ、結果的に「HPVワクチンを推奨した」厚労省の方針をやめさせるに至った経緯があるからと。

HPVワクチンの副反応の後遺症?

これを成功体験と捉えているのなら間違いです。HPVワクチンを開発したドイツでも同じようなことが起こり、「ドイツが、EU内で唯一極端にワクチン接種率の低い国になってしまった」ことをリアルタイムで経験し、当時無知だった自分は後悔しているからです。

あの当時、国営放送は別にして、ドイツの多くのメディアが副反応の被害者にスポットを当てていて、ワクチン接種のリスクがすごく高いものに思えました。

「それでも未成年に接種させるか?」となれば、多くの母親が拒否するのは当然のことでした。娘は当時14歳、ちょうどワクチン接種年齢で、家内もワクチン接種を娘にさせるか悩んでいました。

当時、北ヨーロッパ人は、HPVウイルスによる子宮頸がんになりにくいといわれていました。実際にはそれは勘違いで、ただ知らなかっただけだったのです。北アフリカや中東で、HPVウイルスがかなり広がっているのが流入して、ドイツが子宮頸がん患者の少ない国ではもう決してなかったのです。

接種年齢が14歳からと低かったのですが、当時でも性交渉のある女子は結構いました。「うちの子に限って」という意識が自分も含め多くの親にあった気がします。そのことは、後に国営放送のドキュメンタリー番組で、HPVワクチンを特集したときにも指摘されたことです。

娘のケース

当時、娘は14歳。法律上16歳までは親に決定権があり、その上、主治医は小児科医でした。家内は小児科医に相談しました。ところが、勧めも反対もしないので自分の娘ならどうするか質問したところ、「接種させない」と言われたことが決めてになり、家内が強要しなかったため、娘は接種しませんでした。

不運に思うのは、接種の年齢。16歳以上なら婦人科が主導権を持ち、子宮頸がんという病気について詳しく説明し、時間をかけてワクチン接種の必要性を説いてくれたと思います。

しかし、小児科医にとってHPVワクチンや、子宮頸がんは専門外。これは1つのエピソードに過ぎませんが、今でもドイツでは多くの女子が、HPVワクチンの接種をしていません。ドイツの報道番組では「HPVワクチンの接種が広がらずに、毎年多くの犠牲者が出ていることを憂いている」と何度も伝えているにもかかわらず。

ワクチン接種の啓蒙に成功したイギリスのBBCは、「いかにしてHPVワクチン接種の反対活動が起こったか」を検証した番組を製作しています。ワクチンの成り立ちや歴史、メリットとデメリットなどを見てワクチンを理解し、恐さの排除に役立ちました。ところが、ドイツで見た人は少なく、大きな効果はなかったかもしれません。

ワクチンを怖がる人々

僕の家内も、ワクチンに良い印象を持っていません。政府に対する不信感があり、ワクチンに対する考え方に非科学的なところがあります。僕たちは科学や医療が急速に進化しているなかで生活していますが、その進化から取り残された人々がいます。理解できないものを排除しようとする人々で、不信感を持ったまま取り残されていった人々でもあります。そういう人にとっては「ワクチンは毒であり」「人工的に作られた体にとっては不必要なもの」なのです。

実際はワクチンにより、世界から天然痘ウイルスを根絶させることに成功しました。はしかも、僕より下の世代はワクチン接種により、ほぼなくなっていましたが、まだ根絶には至っていません。ドイツでは、ずいぶん前になくなったと言われていましたが、親がワクチン反対派のため、接種しなかった子供がはしかに感染して広がり、予防接種前の乳児が感染して死亡。何年か前にドイツで起こったことで、ワクチン接種をしていれば防げたことです。

もっとも、中途半端な知識はかえって不安が募るのかもしれません。僕ががん治療のときには医師を信頼し、すべてを受け入れました。ステージ4で、半ばあきらめもあったのですが、それ以上に「生き残れる方法があるとしたら医療を信じるしかない」と思ったのです。運よく信頼できる医師に巡り合い、僕は今も生き延びています。

化学療法は、副作用死もあり絶えずリスクを負っています。でも、効くと信じなければやっていけなかった。抗がん薬を否定する人が時々いますが、個人の考え方だから僕は肯定も否定もしません。しかし、コロナワクチン接種は、普通の生活を取り戻すための義務だと思うのです。

ドイツも日本も反ワクチンや国民皆保険制度など共通点は多いですが、大きく違うのが医療体制です。ドイツはほぼ公立病院のためコロナ感染者が急増しても対応でき、医療崩壊することはありませんでした。

ところが、日本では何百人、何千人レベルの感染者で医療崩壊を起こすといわれ、1年以上経っても何も変わっていないことに困惑しいています。

ドイツでもワクチン接種は遅れていますが、今メディアを使った啓蒙活動を大々的に行っていて、YouTubeでもスポット広告を毎日目にします。その成果かわかりませんが、大きな反対はないようです。

「真夜中のドア」

最近、英語圏やアジアで、当時はニューミュージックといわれていた古い日本の歌がYouTubeからヒットして、世界の若者たちが「いいね」を押しています。

僕も聴いたことのある松原みきの「真夜中のドア」が、世界中で何百万回以上も再生されています。曲が流行った1979年、僕は中学3年生。よくラジオやテレビで流れていたことを覚えています。彼女については何も知らなかったのですが、2004年に子宮頸がんで亡くなったと最近知りました。

彼女は高校生で上京して、見出されてデビュー。彼女の父親は大阪で医師をしていた。「子宮頸がんの告知後、彼女は最後の1年を両親と共に過ごした」と、父親は述懐していました。当時、子宮頸がんワクチンはまだありませんでした。

過ぎたことですが、後悔はいまだに残っています。娘にワクチン接種するか決めるときに、世間の風評を信じてしまったことに。だから、目前のコロナワクチン接種がHPVワクチンの二の舞いにならなかと案じていましたが、心配はいらないようです。介護施設に行っている家内はすでにワクチン接種をしましたが、僕はいつ頃接種できるのか、4月15日現在わかりません。

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