腫瘍内科医のひとりごと 124 眠っていたがん

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2021年4月
更新:2021年4月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

Eさん(55歳 女性)は、ある診療所で肝機能の異常を指摘され、私たちの病院に紹介されてきました。早速、外来で腹部超音波検査を行ったところ、肝臓全体にがんと思われる大小の塊を認めたのです。

乳がん、腎がんの10~15年後の転移

入院していただき、超音波下で肝臓にある腫瘤(しゅりゅう)針生検を行いました。病理検査の結果、乳がんの肝転移との診断でした。

Eさんは、ある病院で15年前に乳がんの手術を受けました。その後、5年間通って経過をみていたのですが、再発はなく、担当医から「もう大丈夫」と言われ、完治したものと思っていました。それが、15年経っての再発だったのです。

乳がんでは、手術後のホルモン療法が5年間よりも10年間が推奨されているのは、このように遅い再発があることが関係しています。

Kさん(60歳 女性)は、排便が困難で、便が細いとのことで来院されました。便の潜血反応は、2日間とも陰性でした。

直腸指診では、とくに直腸に塊を触れることはありませんでしたが、内視鏡検査では、直腸からS状結腸が狭くなっている状態でした。生検では、粘膜下にがんの組織がみられ、手術の結果、10年前に手術した乳がんの転移だったのです。

Aさん(67歳 男性)はある日、右眉毛の上、額のところに2㎝ほどの塊ができているのに気がつきました。痛みはありませんでしたが、丸くて固く、コロッとしていて、指でつまむと皮下を動く感じでした。

何だろうと思い、近くの病院の皮膚科に行ったところ、その日のうちに切除していただき、腫瘤は病理検査に出すことになりました。

14日後、病理組織の結果は、「腎がんが皮下に転移したもの」とのことで、Aさんも皮膚科医も驚いたのです。

Aさんは10年前、腎がんの診断で、右の腎臓は切除しており左腎が残っていました。早速、泌尿器科にまわされて、CT、MRI、PET検査を行いましたが、残った左腎にはがんはできていない。そして他のどこにもがんの陰はないとのことでした。

泌尿器科部長の話では、10年前、右腎がんを切除したが、そのときの体内に残っていた腎がん細胞は、10年間じっと潜んでいて、いまになって右眉毛の上で大きくなってきたというのです。そして今は、どこにも塊はないと言われ、今後も、とくに何も治療しないで様子をみることになりました。

腎がんでは、手術後、5年以上経過してから再発する例もあることから、長期の経過観察が必要とされています。

普通は術後5年以上再発なければ完治だが……

以上のように、5年以上たってからの再発は、乳がんや腎がんでみられることがあります。

がん細胞が、じっと潜んでいて、5年以上経ってから再発してくるのは、他のがんではほとんどありません。ですから、一般的には、がんの手術後、5年以上経過し、再発がなければ完治と考えるのが普通です。

これは非常にまれですが、悪性リンパ腫で、抗がん薬治療によりリンパ節腫大が消失してから5年経過して再発、そこで抗がん薬・分子標的治療薬で完全に消失。そして、5年経過し、また再々発されたことがあります。その後の治療で腫瘤は完全に消失。こんどは10年以上経って再発はありません。

5年以上経っての再発は、乳がん、腎がんではみられることがありますが、他のがんで、5年以上経って腫瘍が疑われた場合は、むしろ再発よりも、新たに別のがんが出てきたことを考えなければならないと思います。

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