精神腫瘍医・清水 研のレジリエンス処方箋

実例紹介シリーズ第11回 治療中の3歳児に、絵やメッセージを渡したいのだが

回答者●清水 研
がん研有明病院腫瘍精神科部長
発行:2023年7月
更新:2023年7月

  

治療中の3歳児に、絵やメッセージを渡したいのだが

患者さんは3歳児。動作がおかしいと感じ、6月初め保育園の健診で診てもらったがはっきりせず、「心配なら血液検査を」と言われ、小児科受診。すぐに大学病院を紹介され検査。脳腫瘍で余命1年と言われ、放射線治療中です。

そこでご相談です。私は患者が通っている保育園の担任です。まだ事実を理解できないお子さんが、保育園に行きたいと言っているそうで、お友だちが書いた絵や先生からのメッセージを渡したいと思っています。ただ、母親がそれを見てつらくなるのではないかと心配です。また、それを渡せば保育園行きたいと、ぐずって困らないでしょうか。もし、渡すならタイミングはいつがいいでしょうか。放射線治療が終わり、症状が落ち着いたら登園したいとのことです。

(保育士 女性)

まずは、お母さんに聞いてから

しみず けん 1971年生まれ。精神科医・医学博士。金沢大学卒業後、都立荏原病院で内科研修、国立精神・神経センター武蔵病院、都立豊島病院で一般精神科研究を経て、2003年、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)東病院精神腫瘍科レジデント。以降一貫してがん患者およびその家族の診療を担当。2006年、国立がんセンター中央病院精神腫瘍科勤務、同病院精神腫瘍科長を経て、2020年4月よりがん研有明病院腫瘍精神科部長。著書に『人生で本当に大切なこと』(KADOKAWA)『もしも一年後、この世にいないとしたら』(文響社)『がんで不安なあなたに読んでほしい』(ビジネス社)など

前職場の国立がん研究センター中央病院では、小児病棟がありました。小児病棟の患児さんたちは、友だちからの寄せ書きなどをベッド脇に飾っていたりしていましたね。やはり、自分のクラスメートたちが自分のことを気にかけてくれるというのは、嬉しいのではないかと思ますね。

ご相談の3歳の子どもですと、そこまでわかる部分とわからない部分があると思いますが、お友だちからお手紙が来たよとか、先生からのお手紙だよというと、きっと嬉しいのではないかと思うんですよね。

ただ、大人の場合と違って、3歳の子どもの場合は、ご両親、とくにお母さんとの結びつきが非常に強いですから、いきなりメッセージを送るのではなくて、この文面からするとお母さんとの連絡は取れているようですので、それらを送られる前に、「お手紙や本人へのメッセージやお友だちの絵を送りたいのですが」などと、お母さんにまず聞いてみられたらどうでしょうか。そうしたら間違いないのではないでしょうか。

「〇〇ちゃんのことを気にかけています。私たちとしては、こういうメッセージをお送りしたいと思っているのですが、逆に保育園に行きたいとか、治療が嫌だという気持ちになってもいけないと思っているので、ちょっと迷っているのですが、お送りしてもいいでしょうか」というようなお母さんへの気遣いの気持ちを込めて聞くのだったら、お母さんに伝わるのではないかと思います。

「送っていいですか、悪いですか」だけじゃなくて、そこに前述のようなお母さんへの気遣いを込められたら、なおいいのではないかと思います。

「私からは想像もつかないところもあるんですけれど、とても大変じゃないかと思っています」、そんな気遣いを込めて聞いてみられたらどうでしょうか。

「励ましたい」からと言ってしまうと、少し押し付けがましいので、私たちとして〇〇ちゃんのことを思っていますので、私たちのメッセージを伝えたいと思っていますというような「I message」(アイメッセイージ)のほうがいいでしょう。

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