喉頭がん
喉頭がん発症のメカニズムと症状を分かりやすく解説

文:諏訪邦夫(帝京大学八王子キャンパス)
発行:2007年7月
更新:2013年4月

  

すわ くにお
東京大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学などを経て、帝京大学教授。医学博士。専門は麻酔学。著書として、専門書のほか、『パソコンをどう使うか』『ガンで死ぬのも悪くない』など、多数。

病因・症状の説明が豊富

喉頭がんで検索すると、上位にきたのは癌研有明病院のサイトでした。

他のサイトにも、共通して言えることですが、喉頭がんという病気の原因や症状の説明が十分になされています。

単純な数字ですが「喉頭がんを発病する年代は60歳以上に多く、発生率は10万人に3人程度」と書かれています。

「男女比は10対1で圧倒的に男性に多い」という特徴を記し、「危険因子はタバコとお酒」、「継続的刺激が発がんに関与」といった事実も述べられています。さらに喉頭がんの患者における「喫煙率は90パーセント以上」と断言しています。

一方、エフェクト社のサイトでは、「米国におけるがん死亡についての調査で、男性の喫煙者が咽頭がんや口腔がんになる率は非喫煙者と比較して30倍近く」であり「女性でも5.6倍」と記述されています。

「地域的に強いお酒を好む地方に喉頭がんが多い」ので、「お酒も喉頭がんの危険因子」ということなのでしょう。ちなみに「熱い食べ物や刺激の強い辛い食べ物を好んで食べる人にも喉頭がんの発生は多い」と記されています。

加えて、「そうした食物を好む人に喉頭がんの発生が多いのは、喉頭の粘膜細胞が常に傷つき、細胞の遺伝子(DNA)ががん化しやすいからだ」「喫煙者やお酒など刺激のあるものを飲食する機会が多い方は遺伝子を傷つける可能性が高く、喉頭がんの発生リスクが高い」と説明しています。

喉頭がんの部位別の症状

ここで、癌研有明病院の解説に戻ってみます。

喉頭がんを部位別に見ると、その割合は声門がんが60~65パーセント、声門上がんが30~35パーセント、声門下がんが1~2パーセントとなっています。

この次にある症状の説明も論理的で、発生部位により最初の症状が異なるとのことです。

声門がんはほぼ全例に嗄声(声がかれる、声がかすれること)が起きると言います。

声門上がん(声門よりも上の部位のがん)は、声の異常は起こらない代わりに、喉の異物感や、食事の際に固形物や刺激物を飲み込んだときのような痛みが出現します。それに、声門がんよりも他の部位に広がりやすいので、首のリンパ節の腫れによって、比較的早期で発見されます。その広がりが声門にまで及べば、声がかすれ、呼吸も苦しくなってきます。

一方、頻度の低い声門下がんは、進行するまで症状が出にくく、進行してから声がかすれ呼吸が苦しくなるそうです。

施設で異なる治療方針

喉頭がんに対する治療の考え方は、病院によって差がみられました。癌研有明病院では単純に、「喉頭(原発)がんの治療は放射線、手術が中心」と書いています。

それに対して、前記したエフェクト社のサイトでは「治療方法を決めるにあたり」という項目で、「医療の進歩とともに喉頭がんの治療方法も多様化して、医師によって治療方法が異なることは珍しくなく、セカンドオピニオンを求めることが必要な時代になりました」と書いて、「患者が決めるべき」面を強調しています。

病院によっての差について、異なる印象を受けたもう1つのサイトが、岡山済生会総合病院のものです。

このサイトには「治療は、早期例には放射線治療が中心となります。その他には炭酸ガスレーザー手術や喉頭部分切除術も行われます。いずれも治療後、発声機能を保存することに主眼が置かれます」と明言します。

次いで「進展例では喉頭全摘術などの手術治療が中心となり、さらに放射線治療や化学療法が併用されます。頸部リンパ節転移が認められたり、疑われたりする場合は頸部郭清術が併用されます。

原則として発声機能が失われ、術後は人工喉頭、電気喉頭、食道発声などで音声の再獲得が必要」と書かれています。

喉頭がん闘病観戦記

「喉頭がん」の検索でトップに出たのは、この「闘病観戦記」のページです。

「闘病観戦記」という不思議な表現は、ご主人(50歳代後半の新聞記者)の闘病を支えている奥さんが書いたもので、亡くなるまでの約3年半の記録です。

この記事を何と要約したらよいでしょう。「充実した」、「心情あふれる」、「情報も多い」などの言葉が当てはまります。というのも、奥さんの分だけで50万バイトつまり新書版で2冊半ある膨大な文字量だからです。

文中には「軽い気持ちで読んでいただけると嬉しい」と記していますが、分量と内容から軽く読むわけにはいきません。内容豊かなドキュメンタリーですが、雰囲気が重く沈んでいて、読むことがつらい部分も少なくありません。

全体が、がんの告知・化学療法・多重がん・頸部郭清・放射線治療・咽喉頭全摘・術後合併症・退院・再発・最後の7カ月という10の章に分かれ、さらに各章が20前後の項目に分かれています。 章はほぼ時間経過の通りになっており、いきなり告知を受けます。「告知」は患者さんにも家族にもショックなものですが、病気の性質から隠すことが不可能な点と、治療法選択が重大なので、どの病院も同じようにするでしょう。

次の項の「化学療法」は、手術に進む前の一応の手順ですが、それを開始したところで「多重がん」で食道がんがみつかってしまいます。

喉頭がんと食道がんは位置的に近いのに、病気の性質は大きく異なります。おまけに専門が前者は耳鼻科で後者は外科という面倒な問題も生じます。

患者さんは、耳鼻科医からは頸部郭清と咽喉頭全摘を勧められますが、声を失いたくないと放射線治療を選択します。しかし、結局は咽喉頭全摘を受け、声を失うことになります。

その後、電気喉頭でコミューニケーションを図りながら、夫妻は生活に積極的に向き合います。しかし、がんは再発して「最後の7カ月」の章を迎えてしまうのです。

最後に患者さんは死を決断して医師に薬物使用を依頼します。ここから死までのプロセスは私の知識になかった点で、興味深く読ませていただきました。

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