国内初、通院で第Ⅰ相試験参加も可能に

国立がん研究センター中央病院が「第2通院治療センター」を開設

取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年5月
更新:2015年8月

  

国立がん研究センター中央病院(病院長:荒井保明氏)は3月16日会見を開き、国内初となる通院で第Ⅰ相試験を含む治験を行える「第2通院治療センター」を開設、3月23日より本格始動をすると発表した。

治験に参加したいが入院がネックに

現在、海外の主ながんセンターでは、第Ⅰ相試験を含む多くの治験を外来で実施しているが、日本では設備・体制の整備が遅れており、とくに第Ⅰ相試験は約1カ月入院して行っているのが現状だ。なぜ入院が必要なのか。それは第Ⅰ相試験が人に投与する初めての段階であり、血中の薬物濃度の測定を頻回に行うなど、検査や観察項目が多く、外来での対応が難しくなるためだ。

国立がん研究センター中央病院でも、第Ⅰ相試験は入院して行っているのが現状だったと、通院治療センター長の田村研治さんは言う。しかし、第Ⅰ相試験に参加するのは、標準的治療法のない患者さんが対象となる。

「標準治療を終えて、緩和医療にいくのか、第Ⅰ相試験の治験に参加するのかといった患者さんにとって、約1カ月の入院はつらいことです」

新薬を試してはみたいが、「子どもがいる」「仕事などで時間がとれない」、あるいは「残された時間を家で過ごしたい」といった理由で、第Ⅰ相試験への参加を躊躇する人も多かったという。

治験参加希望の患者さんの選択肢が広がる

ベッドタイプ4床とチェアタイプ22床の計26床を増床。第1通院治療センター(36床)と合わせて合計62床が整備されることになる

そこで、国立がん研究センター中央病院では、外来で第Ⅰ相試験を行える設備・体制を整備し、第2通院治療センター(病床数26床)を開設。検査室を設け、時系列に薬物動態解析を行える体制や、救命救急室を設置し、抗がん薬によるアレルギー反応や点滴反応など、重篤な副作用にも迅速に対応できるよう整備した。

また、治験に関わる医師、看護師、薬剤師、臨床研究コーディネーターなどの体制も強化。新たに対面式の面談室も設置し、外来で治験を行うにあたって、患者さんへの治療説明、副作用指導、さらには生活支援、就労支援なども含めて、チーム医療として患者さんを支えていく方針だ。

「患者さんには『もしあなたが希望すれば外来で、働きながら、生活をしながら治験に参加することもできますよ』と説明することで、選択の幅が増えることが期待できます」

日本でも第Ⅰ相試験を外来で行える仕組み作りへ

図1 国立がん研究センター中央病院の治験件数

2013年の国立がん研究センター中央病院における治験件数は245件(図1)。第Ⅱ相、第Ⅲ相と比べ、第Ⅰ相試験の数は少ないという。田村さんは、今後、第2通院治療センターを通じて、第Ⅰ相試験の実施は増えていくとし、その中で外来でできるものはどんどん外来で行っていきたいと話す。

今回開設した第2通院治療センターを「あえて『外来治験センター』と言いたい」と田村さんは言う。第Ⅰ相試験を含む治験を外来で行うことが当たり前となっている欧米のような環境を日本でも作りたいとし、「今回の取組みは日本における新しいモデルとなる」と語った。

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