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からだに異常を感じたら早めに対処することが大切
QOLを高める前立腺がんホルモン療法の副作用対策あれこれ

監修:深見隆志 昭和大学医学部泌尿器科学准教授
取材・文:池内加寿子 静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科部長
発行:2008年2月
更新:2013年8月

  

深貝隆志さん
昭和大学医学部
泌尿器科学准教授の
深貝隆志さん

前立腺がんのホルモン療法はどのステージでも使える全身的な治療法ですが、男性ホルモンの低下に伴い、性機能障害やホットフラッシュ(ほてり)、骨粗鬆症などの副作用が起こることがあります。 薬剤によっては、肝障害や心血管障害など、まれに重篤な症状をきたすこともあるので、異常を感じたら早めに対処することが大切です。

侵襲性が低い治療法でも副作用はある

ホルモン療法は、手術や放射線治療に比べて侵襲性が低い治療法として、日本人に好まれる傾向があるようです。ホルモン療法が治療の中心となるステージD期だけでなく、手術や放射線治療の可能なステージA~C(T1c~3b期)でも2000年泌尿器科学会のアンケートによると、約半数の人がホルモン療法を受けています。

早期の場合でも、放射線とホルモン療法を併用するケースもありますし、高齢の人ばかりでなく若い人でも手術などの治療を避けてホルモン療法を希望されることもあります。また退職後に予定している手術や放射線治療までの期間をホルモン療法でしのぐという人もいます。欧米人がホルモン療法を敬遠するのと対照的です。

ホルモン療法は前立腺がんに効果的な治療法とはいえ、副作用はあります。現在行われている主なホルモン療法には以下の方法がありますが、薬剤等によって副作用の現われ方も異なります。

(1)精巣で作られる男性ホルモン(テストステロン)の分泌を抑える方法としては、LH-RHアゴニストであるリュープリン(一般名酢酸リュープロレリン)もしくはゾラデックス(一般名酢酸ゴセレリン)を1カ月または3カ月に1度皮下注射する方法と、手術で精巣を摘出する外科的去勢術(精巣摘除術)があります。

前者は、精巣由来の男性ホルモンが、脳の視床下部と下垂体の指令によって分泌されることに着目した方法です。視床下部から分泌されるLH-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)と似たLH-RHアゴニストを投与して下垂体を絶え間なく刺激し続け、感受性を鈍らせて精巣への指令をストップさせ、男性ホルモンの分泌を抑えます。

LH-RHアゴニスト、外科的去勢術ともに男性ホルモンを低下させるので、性機能障害やホットフラッシュなどが高頻度に起こります。

(2)経口薬の「抗アンドロゲン剤」は、前立腺がん組織内で男性ホルモンががんに作用するのを防ぐ方法で、わずかに作られている副腎由来の男性ホルモンの働きも抑えることができます。

非ステロイド性のカソデックス(一般名ビカルタミド)、オダイン(一般名フルタミド)、ステロイド性のプロスタール(一般名酢酸クロルマジノン)の3剤があり、主治医の判断でこれらの薬剤が使い分けられます。

カソデックス、オダインは男性ホルモンの分泌自体を抑制するわけではないので、性機能障害は起こりにくいです。ただし、とくにオダインで肝障害が強く出る傾向があります。プロスタールは男性ホルモンの分泌を抑えるため、性機能障害が起こることがあり、高脂血症や糖尿病が進行する場合もあります。

(3)(1)のLH-RHアゴニストまたは外科的去勢術と、(2)の抗アンドロゲン剤を併用するMAB療法(もしくはCAB療法)は、現在もっとも多く行われている方法です。副作用は(1)とほぼ同じと考えてよいでしょう。

(4)このほか、女性ホルモン(エストラジオール)と抗がん剤(ナイトロジェンマスタード)を合わせたエストロゲン製剤のエストラサイトも前立腺がんに有効ですが、心血管障害やむくみ、女性化乳房などの副作用が強いため、現在ではあまり使われなくなりました。他の薬剤の効果がみられなくなったときや副作用対策の選択肢の1つとして考慮されます。

[ホルモン療法の副作用一覧]
ホルモン療法の種類 薬剤名など おもな副作用
外科的去勢術
(精巣摘出術)
外科手術による精巣(睾丸)摘出 性機能障害
ホットフラッシュ
骨粗鬆症
LH-RHアゴニスト リュープリン(一般名リュープロレリン)
ゾラデックス(一般名酢酸ゴセレリン)
性機能障害
ホットフラッシュ
フレアアップ
骨粗鬆症
抗アンドロゲン剤 〈非ステロイド性〉
カソデックス(一般名酢酸ビカルタミド)
オダイン(一般名酢酸フルタミド)
女性化乳房
肝機能障害
(とくにオダインで)
〈ステロイド性〉
プロスタール
(一般名酢酸クロルマジノン)
女性化乳房
性機能障害
MAB療法 外科的去勢術または
LH-RHアゴニストと
抗アンドロゲン剤の併用
性機能障害
ホットフラッシュ
骨粗鬆症
女性ホルモン
(エストロゲン)製剤
エストラサイト
(一般名リン酸エストラムスチンナトリウム)
心血管障害
むくみ
女性化乳房

出現しやすい副作用と対処法・予防法

性機能障害

LH-RHアゴニスト、外科的去勢術、MAB療法では、男性ホルモン(テストステロン)が去勢レベルまで低下するため、程度の差はあれ大部分の患者さんに性欲の低下、勃起不全(ED)などの性機能障害が出現します。

【対策】

治療中は改善が難しいのですが、ホルモン療法を中止すれば回復します。また、経口の抗アンドロゲン剤(カソデックスまたはオダイン)の単独使用や、ホルモン療法を中断する間欠的ホルモン療法(注1)で回復する可能性があります。

バイアグラ(一般名シルデナフィル)などのED治療薬は、少しでも勃起がある場合には持続させる効果が期待できますが、性欲を喚起させるわけではありません。血管拡張剤などの注射によって勃起させる方法もあるようですが、保険も適用されておらず、一般的な治療法とはいえません。

注1 ホルモン療法の有効期間を延長し副作用を軽減させる目的で施行されている研究段階の治療法

ホットフラッシュ(ほてり)

女性の更年期症状として知られる顔や上半身のほてり、発汗などを主体とするホットフラッシュは、ホルモン療法を行っている男性にも、治療開始後1、2カ月くらいからしばしば認められる症状です。動悸、不安、不眠などを伴う人もいます。LH-RHアゴニスト、外科的去勢術、MAB療法では3~4割、抗アンドロゲン剤単独使用者にも1割程度にみられます。

男性ホルモンの分泌に関係する脳の視床下部にある体温中枢の変調が原因という説がありますが、詳細はわかっていません。

【対策】

以下のようなさまざまな方法が検討されています。

(1) ホルモン療法の薬剤の種類を変更

ホットフラッシュが起こりにくいステロイド性抗アンドロゲン剤のプロスタールか、女性ホルモン製剤(低容量の処方)に変更します。

(2)セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)のパキシル(一般名塩酸パロキセチン)を投与

ホットフラッシュは脳内のセロトニン減少と関係があり、神経終末のセロトニンを調整するSSRIが症状を改善するといわれています。

当科で、週に7回以上のホットフラッシュが1カ月以上続く10人の患者さんを対象に有効性を検討したところ、治療開始後4週間後には、頻度、苦痛度、QOL(生活の質)ともに有意に改善され、重篤な副作用は認められませんでした(図1、2)。

SSRIはうつ病やパニック障害などに用いられる薬剤ですが、米国では若年者の自殺が増えるなどの危険性も指摘されているので、医師に相談し、慎重に使用する必要があります。

[図1 ホットフラッシュに対するSSRIの効果]
図1 ホットフラッシュに対するSSRIの効果
[図2 ホットフラッシュに対するSSRIの効果(QOL)]
図2 ホットフラッシュに対するSSRIの効果(QOL)
(3)漢方薬の使用

女性の更年期症状にも使われる桂枝茯苓丸は、穏やかに症状を改善させます。SSRIは慣れている医師でないと使いにくい薬剤ですが、漢方薬は副作用がない点もメリットです。

このほか、アメリカでは抗てんかん薬のガバペン (一般名ガバペンチン)が、ほてりの頻度を減少させると報告されています(注2

注2 米国でホルモン療法施行者223人を対象に行われたランダム化2重盲検試験による

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