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骨粗鬆症など、骨関連事象の対処法と生活上の留意点
乳がんホルモン療法の副作用と対策

監修:矢形寛 聖路加国際病院ブレストセンター・乳腺専門医
取材・文:町口充
発行:2008年10月
更新:2019年8月

  

矢形寛さん
聖路加国際病院
ブレストセンター・乳腺専門医の
矢形寛さん

乳がんのうち、女性ホルモンであるエストロゲンの影響を受けて増殖するタイプのがんでは、ホルモン療法が有効。
だが、ホルモン療法はエストロゲンを働けなくさせるため、更年期障害と同じような症状とともに、骨がもろくなって骨折しやすくなる骨粗鬆症や、つらい関節痛などの副作用を伴う。そこで今回は特に、骨関連事象とその対策についてまとめた。

ホルモン療法の3つの方法

「乳がんの手術前後には、どこに飛んでいるかわからない微小転移を抑える目的もあって全身治療を行います。全身治療には内分泌(ホルモン)療法と化学(抗がん剤)療法とがあり、重要な位置づけになっています。なぜホルモン療法が重要かというと、乳がん細胞の多くがエストロゲン受容体を発現していて、体の中で作られたエストロゲンがこの受容体と結びつくと、増殖が促進されるためです。これを逆手にとって、エストロゲンの働きをブロックし、乳がん細胞の増殖を抑えるのがホルモン療法です」

と語るのは、聖路加国際病院(東京・中央区)のブレストセンター・乳腺専門医、矢形寛さんだ。

エストロゲンをブロックする方法はいくつかあり、閉経前か閉経後かによっても使う薬が違ってくる。

1つは、脳(下垂体)に働きかけて、卵巣でエストロゲンが作られるのを抑える方法で、LH-RHアゴニスト製剤が使われている。いわば卵巣を眠らせて、閉経状態にしてしまおうというわけで、閉経前の患者に用いられるのがこの薬だ。ゾラデックス(一般名酢酸ゴセレリン)、リュープリン(一般名酢酸リュープロレリン)の2種類があり、どちらも皮下注射薬。

2つめは、エストロゲン受容体をブロックして、エストロゲンが乳がん細胞に作用するのを妨げる方法。タモキシフェン(商品名ノルバデックスなど)という経口剤がある。閉経前にも閉経後にも使える薬だ。

閉経すると卵巣機能が働かなくなり、エストロゲンも作られなくなるが、副腎皮質から分泌されるアンドロゲン(男性ホルモン)が、全身の脂肪細胞にあるアロマターゼという酵素によって、エストロゲンに変換される。そこで、アロマターゼの働きをブロックしてエストロゲンを作れないようにする薬がアロマターゼ阻害剤。アリミデックス(一般名アナストロゾール)、フェマーラ(一般名レトロゾール)、アロマシン(一般名エキセメスタン)の3種類があり、いずれも経口剤だ。

「私のところでは、閉経前はLH-RHアゴニスト製剤とタモキシフェンを使っていますが、閉経後の患者さんでは、タモキシフェンよりアロマターゼ阻害剤のほうが再発抑制効果があり、生存率を高める効果があることがわかっているので、明らかに閉経したと確認できる場合は、ファーストチョイスとしてアロマターゼ阻害剤を使っています」

ホルモン療法はつらくないか?

[ホルモン療法の影響と主な副作用]

アロマターゼ阻害剤 抗エストロゲン薬
女性性器に対する影響↓
子宮がん↓
コレステロール↓
骨量↑
骨量↓
関節痛・筋肉痛↑
心血管系に対する影響
女性性器に対する影響
血栓塞栓症↑
子宮がん↑

化学療法と比べたホルモン療法の利点として、副作用が穏やかなので使いやすいといわれるが、実際のところはどうだろうか。(右表)

矢形さんは常々、「化学療法はつらいけど、ホルモン療法は副作用が軽いのでつらくない」という言い方は、決してしてはいけないと戒めているという。その理由をこう語る。

「たしかに化学療法の副作用は、吐き気、倦怠感など強いものがありますが、一時的なものであり、3カ月とか半年とかの一定期間がんばれば何とかおさまります。これに対してホルモン療法は、5年間とかの長い期間をかけて治療効果を及ぼすものですから、1日あたりの副作用は小さくても、毎日毎日の副作用が延々と続いていけば、非常につらい思いをする場合があります。私がよく表現するのは、抗がん剤はストレートパンチだが、ホルモン療法はボディーブローのような感じということ。一発一発はたいしたことなくても、ジワジワときいていって生活の質(QOL)を低下させる可能性があるので、ホルモン療法はラクだよ、という言い方は決してしないようにしています」

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