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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第35回 意図してくつろぎタイムを持つ <完全なくつろぎのポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2021年4月
更新:2021年4月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

春が近づくと、日々の天気も温度も変化が激しくなります。いっそ冬の西高東低で一本調子の寒さが恋しいくらい。その上、今年の花粉は去年の2倍近く飛来しているようです。さらに毎年のことながら、年度末年度初めのあわただしさ。さらにさらに新型コロナ対策の緊急事態宣言の延長。

普段以上にストレスにさらされていると自覚しましょう。ストレス耐性を高めるには、睡眠不足を警戒し、良質な休養を意図的に確保する必要があります。

全身弛緩の「シャヴァーサナ」、直訳は「死体のポーズ」

ヨガの「シャヴァーサナ」、直訳すれば「死体のポーズ」あるいは「亡骸のポーズ」となります。私は「完全なくつろぎのポーズ」という言葉を使っています。全身を弛緩させるポーズです。

ヨガの文化的背景の1つであるヒンドゥー教の伝統的な考えでは、「死体」のイメージは、穢れや忌まわしさと違って、生きることにともなう諸々の煩悩から解放された「平和と静寂」のイメージがあるのだそうです。果てしなく輪廻転生を繰り返えす「生」と「生」の間のつかの間の休息なのだとも言います。

ヨガ・エクササイズでは、締めに「完全なくつろぎのポーズ」を行います。

30年以上前になりますが、日本を代表する映画監督の市川崑さんが私のパーソナルセッションに通っていたことがありました。「細雪」を撮る前だった、その直後だったかという時期でした。

お忙しい方なので、なかなかセッションの時間が取れません。

「でも、僕は毎日1時間はヨガをやっているのですよ」とおっしゃいます。

「シナリオを書いているときなど、気分転換にやってます」

どんなポーズを主になさってますかと伺うと、

「あの、ごろんと寝ているヤツがいいですね」

完全なくつろぎのポーズです。

マットに身体が触れている部分に注意を向けて

ただごろんと寝ているだけではないかと思う人がいるかもしれませんが、眠るのではなく、ただごろんと横になっているだけというのは、やってみればわかりますが、想像以上に容易ではありません。余分な力が抜けてリラックスしてくると眠ってしまうことが多いもの。それはそれでいいのです。身体が眠りを必要としているということですから。

そんなときは目が覚めたら、しばらくそのままくつろいでみましょう。

「完全なくつろぎのポーズ」が苦手だという人も少なくありません。

リラクセーションも眠りと同じく、手を伸ばしてゲットするものではありません。リラクセーションも眠りも訪れるものです。とくに何もしないで、ただごろんとしているといつの間にか訪れるのです。

ヨガ・エクササイズの後では、身体の各部位をていねいに伸展収縮した後なので、その筋肉疲労も手伝ってリラックスしやすくなっています。

マインドフルネス・ヨガでは「完全なくつろぎのポーズ」だけを取り上げて行うこともあります。

自分の身体に部位の1つひとつに注意を向けて、丁寧に味わっていくのです。

今回はマットに自分の身体が触れている部分に注意を向けるやり方で、マインドフルネス(意図的に、今という瞬間に、価値判断しないで、注意を向けること)していきます。

紹介するビデオは4分40秒。できればもう少し長く、10分前後やるといいと思います。

<完全なくつろぎのポーズ>

仰向けになり、両足は肩幅よりやや広めに開き、両腕は腋をゆるめ、ゆったり投げ出します。手のひらは上に向けます。顔は天井に向け、目を閉じます。

背中に厚みがあると、顎(あご)が上向きになり、項(うなじ)が緊張します。バスタオルを2つ折りにしたものか座布団などを肩まで敷くと、リラックスしやすくなります。

いったん仰向けなったら、ゆらゆらとからだを動かしてみます。

腰に違和感を感じる人も少なくありません。腰痛予防のために両膝ないし片膝を立てます。腰背部の反りが緩和され、らくになります。

大体の姿勢が決まったら、このままふつうに呼吸しながら続けます。

自分の体がマットと接している部分に1つひとつ注意を向けていきます。

まず、踵(かかと)はマットと接しています。接している感触を右踵、左踵それぞれ感じるままに感じます。左右の違いがあると、なぜだろうか、いつからだろうか追及したくなるかもしれませんが、今この瞬間に体験していることをただ受け止めます。

脹脛(ふくらはぎ)、腿の裏側、お尻、背中、マットと接している部分に注意を向けていきます。

右手左手、前腕、上腕そして後頭部。普段仰向けになっても、さして気に留めていなかったと思いますが、マットと接している部分にただ注意を向けて、とくに何も感じなかったらそれも今という瞬間の体験ですから、「そうなんだ」と、ただ受けとめていきます。

その部分が緩むと、マットに接している部分がわずかにじわっと広がります。そんなことに気づくことがあります。

ちょっと凝っているなとか、冷えた感じや違和感を感じる部分があることも。そんなときって、「何が原因かな」とか、「いつ頃から?」とか、「整形外科に行ったほうがいいかな」といった考えが頭をよぎるかもしれません。

それは、今この瞬間に感じている違和感について考えているのです。考えようと思っているわけではないけれど、考えがほとんど自動的に転がっていくという状態です。そんなときは、もう一度自分の身体のその部分が今この瞬間体験していることに注意を戻して、それがどんな感じなのか味わいます。呼吸とともに意識するとやりやすいと思います。

意識のスポットライトを当てている感じ。いつの間にかそこから意識がその部分からそれます。それでいいのです。

大体10分くらいと思ったところで覚醒します。薄目を開け、両手両足をゆっくり動かし、大きく伸びをして、ゆっくり起き上がります。時計を見て、どれくらいの時間やっていたのか確かめます。

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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