2期の舌がん。手術と小線源治療はどちらがよい?
33歳の娘が2期の舌がんと診断されました。大きさは2センチ、リンパ節転移はなく、舌の縁にできています。気にはなっていたけど、口内炎だろうと思い、ビタミンB剤を飲んでいたそうです。手術と小線源治療*という2つの治療法を提示されたのですが、完治もさせたいし、見た目が悪くなるのも嫌だし……と迷っています。どちらの治療成績がよいのでしょうか。また、治療による副作用はいかがでしょうか。
(東京都 女性 64歳)
A 治療成績は同じだが、放射線治療の副作用を考慮して手術を勧める
2センチ程度はそれほど大きいものではありませんから、基本的には手術でも小線源治療でもどちらでもいいと思います。治療成績はどちらでも変わりません。
しかし、まだ娘さんは33歳と若いので、がんを取り切るという意味と、放射線による晩期障害*が起こる可能性を考えると、手術を優先したほうがよいでしょう。
放射線による晩期障害とは、1つには下顎骨(下あごの骨)の露出や骨髄炎があります。感染して骨髄炎になった場合は薬で治療しますが、ときには重篤なケースも起こりえます。2つめは放射線による2次発がんです。これらは10年も先に起こってくる小線源治療の障害です。
この晩期障害を防ぐために、最近では「スペーサ」という器具を使います。放射線があごの骨に当たらないようにアクリル製のマウスピースを装着するのです。以前はこの器具を装着していなかったので放射線潰瘍が起こり、骨が露出したり、骨髄炎が起こったりしていました。今後治療する場合は必ずスペーサをつけると思いますので、晩期障害は起こりにくくなるでしょう。しかし、小線源治療は線源管理が難しいため、現在この治療を行える施設は減っています。
手術する場合のデメリットとしては、切除範囲によっては舌の先を使うような言葉、たとえば「らりるれろ」などが発音しにくくなることがあります。また、食べ物をかんだりするときには少し違和感があるでしょう。しかし、舌は口のなかにあって見えませんから、外見的な変化は心配要りません。
若い方はあごが小さく、歯が内向きに倒れていることが多いので、舌がんは舌の縁にできやすいという特徴があります。1つ気をつけていただきたいのは、若い方のほうが悪性度が高く再発しやすいということです。そのため、経過観察をしっかり行っていくことが大切です。
*小線源治療=ガンマ線など放射線を発する線源(小線源)を直接舌に埋め込んで行う放射線治療
*晩期障害=治療終了後、何年も(時には10年以上)たってから出てくる放射線の副作用や合併症のこと
- ●2度の舌がん手術を乗り越え新たな夢に挑戦 がん患者や障がい者が生きやすい社会を目指して
- ●舌がんになった医師が、再発予防のため辿り着いた結論とは 16時間の空腹時間を作ってみることを勧めます
- ●放射線治療で舌を温存し、治療後も味覚を損ねない生活を QOLを考えた選択肢、舌がんの小線源治療
- ●TPP担当閣僚在任中、舌がんが見つかった甘利 明さん(67歳) 自分が成し遂げるべきことを強く意識するようになりました
- ●味覚も言葉も損ねない舌がんの小線源治療 知ってほしい!手術よりもはるかにQOLが高いことを
- ●「同じ舌がんの人の役に立てれば」と綴った絵日記から生まれるエネルギー ささえてくれる人への感謝を絵に描きとめておきたい