舌がんになった医師が、再発予防のため辿り着いた結論とは 16時間の空腹時間を作ってみることを勧めます

取材・文●髙橋良典
撮影●「がんサポート」編集部
発行:2019年8月
更新:2019年9月

  

青木 厚さん あおき内科/さいたま糖尿病クリニック院長

あおき あつし 自治医科大学さいたま医療センター内分泌代謝科などを経て、2015年青木内科・リハビリテーション科(2019年に現名称に)を開設。糖尿病、高血圧、脂質異常症など生活習慣病が専門。自身も40歳で舌がんを患うも食事療法を実践してがんの再発予防に努めている。ライザップの医療監修ほか「行列のできる法律事務所」(日本テレビ系)「直撃!コロシアム!!ズバッとTV」(TBS系)などメディア出演多数。

2019年2月に発売され既に7万部を売り上げた『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)という興味深いタイトルの本がある。著者の青木厚さんは、さいたま市東大宮で、あおき内科/さいたま糖尿病クリニックの院長をしている。

その青木さんが40歳のとき、舌がんに罹ったことで「幼い子どもを残して死ぬわけにはいかない」と、がん再発予防のための論文を読み、たどり着いた結論がこの本の表題なのだ。この生活を実践して9年。体調は頗(すこぶ)るいいと言う青木さんに話を訊いた――。

※本稿執筆にあたり『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)参考

舌がんステージⅠで切除手術

自治医大の大学院生で、さいたま医療センターの医師だった青木厚さんが舌の異変に気づいたのは2009年12月のことだった。いつものように朝、歯を磨いているとき、舌の左側に1㎝四方が白くなっているのを見つけた。

「これは白板症(はくばんしょう)だな」と、咄嗟に思った青木さんは、病院内の歯科・口腔外科の医師に診断を仰いだ。やはり思った通りで、医師からは「これは白板症だね。形が変化したらまた来てください」と言われた。

青木さんの専門は糖尿病・内分泌で、口腔外科は専門外だったが医師としての一般常識として、白板症が舌がんに移行する確率は数%であることは知っていた。

しかし、がんに移行する確率は数%なので、「まあ、大丈夫だろう」と思って、そのまま様子を見る状態を続けた。舌に何の変化も見られなかったのだが、2010年10月ごろから食事をする度に、ピリッとした痛みが出てくるようになってきた。鏡で舌を見てみると、白くなっていた箇所が潰瘍化していた。

直ぐに、以前診てもらっていた歯科・口腔外科の医師の診断を仰ぐと「舌がんステージⅠです」と告知された。

「あなたはがんです」と医師から告知されたときに多くの人がそうであるように、青木さんもまた「まさか自分ががんになるなんて」と思ったという。

しかし、幸いにして転移のないステージⅠだったので、医師から「小線源(しょうせんげん)療法と手術と、どちらを選びますか」と問われたとき、3秒考えてから「手術でお願いします」と答えた。

「確実に、がんを取り除く手術のほうがいいと思ったからです」

そして2010年11月、舌の左側4分の1を切除する手術を受けた。

切除した舌の左側4分の1(左)。右は口腔内扁平苔癬も合併していたため右頬粘膜を生検したもの

がんが再発しない方法はないのか

入院は2週間ほどだったが、手術直後から舌全体が痺(しび)れていて、食事をしても味があまりわからない後遺症が5年間も続いたという。

「そんなことになるなんて、手術をした医師は事前に話してはくれませんでしたけど。まぁ、命を救ってもらっているので文句は言えませんけどね」(笑い)

舌がんを発症した当時、青木さんには幼稚園に通う2人の娘と、奥さんのお腹にもう1人の子供を授かっていた。

青木さんが舌がんを発症した同じ時期に、奥さんの友人も舌がんに罹り、その友人は頸部リンパ節に転移があり、半年後に肺にも転移して4歳の子供を残して亡くなってしまった。

そんな出来事があったことで、「子どもを残して死ぬわけにはいかない。何としても生きて行かなければ」と思ったという。

「40歳で舌がんになったということは、自分はがん体質でこのまま何もしないで今のまま同じ生活を続けていたら、舌がんの再発や他のがんになる可能性が高いのではないか。何とかがんにならないですむ方法はないか、と米国の医学論文に当たってみることにしました」

その結果、PubMed(米国立衛生研究所の米国立医学図書館)の医学論文の中のcancer prevention(がん予防)の論文を読んでいるうちに、がんを発症する主たる原因には「細胞の質の劣化」と「免疫力の低下」があることに気づかされた。

「そういえば舌がんを発症したときは、毎月のように風邪を引いていましたね。風邪を引きやすいのはNK(ナチュラルキラー)細胞がよく働いていない体質だということです」

――その体質を改善できれば、がんの再発を防ぐことができるのではないか――

そう思った青木さんは「細胞の質の劣化を食い止める方法」と「NK細胞の活性化の方法」の論文を捜すことに集中していく。

そしてAutophagy(オートファジー)とintermittent fasting(間欠的断食)という言葉に出合ったのだった。

「オートファジーとは、簡単にいえば『古くなった細胞を、内側から新しく生まれ変わらせる仕組み』のことで、細胞が飢餓状態や低酸素状態に陥ると活性化するといわれています」

このオートファジーの仕組みの解明で、2016年には大隅良典・東京工業大学特任教授がノーベル生理学・医学賞を受賞している。

「体の不調や老化は、細胞が古くなったり壊れたりすることによって生じます。オートファジーによって古くなったり壊れたりした細胞が新しく生まれ変われば、病気を遠ざけ老化の進行を食い止めることができるのです。オートファジーが働くようになるには食事を摂って16時間後からで、空腹の時間を作ることで病気を遠ざけることができる、と私は考えています」

病理組織診断報告書

資料を示しながら話をする青木さん

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