急性リンパ性白血病で、骨髄移植か臍帯血移植を考えているが
7歳の1人息子のことでご相談します。急性リンパ性白血病と診断され、抗がん剤治療を受けていましたが、なかなか寛解に至りませんでした。今後、抗がん剤を代えて、第1寛解期に入った時点で移植を行うと言われています。1人息子のため、兄弟ドナー(提供者)はいません。骨髄バンクと臍帯血バンクに登録して、適応するドナーを探していますが、生着不全などの心配もあります。いずれかのドナーが見つかった場合、移植を受けてよいものか、今も悩んでいます。アドバイスをお願いします。
(茨城県 男性 36歳)
A 骨髄移植を第1に考えたほうがよい
小児急性リンパ性白血病の第1寛解期で移植を行ってよいとされているのは、一般的には、長期の生存割合(治癒率ともいえます)が40パーセントを切る病態です。お子さんは「なかなか寛解に至らない」ということですから、再発の危険性はかなり高く、移植を受けられるのは、妥当な選択だと思います。移植を受けると、再発率は低くなります。
骨髄バンクと臍帯血バンクでは、一般的には、ドナーは臍帯血バンクのほうが見つかりやすいです。骨髄移植では、6抗原あるHLA(ヒト白血球型抗原)が患者とドナーとで完全に一致しないと移植できませんが、臍帯血移植では、6抗原のうち4抗原が一致していれば移植できるためです。
また、臍帯血は赤ん坊のへその緒から取る胎盤の血液で、すでに採取して、保存してあるものを使用します。そのため臍帯血移植では、ドナーさんの提供意思やスケジュールに左右されません。
ただし、臍帯血移植には、デメリットもあります。まず生着不全が起こる割合が骨髄移植に比べて高い点です。
生着とは、移植された細胞が新しい場所で、身体の一部として生きて、機能することです。骨髄移植などの造血幹細胞移植の場合でいえば、ドナーから移植した造血幹細胞が患者の骨髄の中に入り込み、新たな血球を作り始めることです。造血幹細胞移植で白血病を治すためには、生着が大前提です。
生着不全は移植された細胞が拒絶されて、このプロセスがうまくいかないことで、これは治療としては失敗を意味し、命に関わる事態にもなりかねません。
生着は起こるけれど、生着が遅いために感染合併症が多くなることも臍帯血移植のデメリットです。個人差はありますが、生着は通常、骨髄移植より臍帯血移植のほうが遅くなります。
また、7歳というと、ある程度、体が大きくなっていると思います。体が大きいと、その分、必要な細胞数が多くなりますが、臍帯血の量はすでに決まっているため、増量することはできません。その点、骨髄移植では、患者さんの体重に見合う骨髄の量を採取して移植できます。
また、成人の白血病では、臍帯血移植より骨髄移植のほうが治療成績や安全性が高いといったデータは多々あります。
以上のような現状を考えると、骨髄移植のほうがより標準的な移植法であるといえます。
臍帯血移植を受けたほうがよいケースは、小さな子供で、かつ再発する危険性が迫っていて、骨髄移植のドナーを待つ時間的な余裕のない場合です。この方の場合は、第1寛解期に入る時期の移植を考えているのですから、急を要するような状態ではないでしょう。
以上のことなどから、骨髄移植を第1に考えてドナーを探すことをおすすめします。ただし、骨髄移植はドナーが見つかっても、最終的な同意を得られないこともあることなどから、臍帯血移植を第2候補として考え、臍帯血移植のドナー検索も継続するのがよいと思います。