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膀胱がんでも近い将来、実臨床での使用に期待が
腎細胞がんで免疫チェックポイント阻害薬が承認され、治療選択の武器が増える
2014年に悪性黒色腫(メラノーマ)で初めて保険承認された免疫チェックポイント阻害薬。16年8月には腎細胞がんにも適応拡大された。そして、投与法などさらなる研究も進められている。腎細胞がんへの適応を中心に最新の免疫チェックポイント阻害療法について専門医に伺った。
オプジーボが腎細胞がんにも
「腎細胞がんにチェックポイント阻害薬が承認されたのは歴史的に大きい。新規治療法の開発が容易ではなかったがんに1つの武器が増えたのは画期的」と、国立がん研究センター中央病院先端医療科の北野滋久さんは新薬の腎細胞がんへの適応拡大を歓迎する。
適応拡大されたのは*オプジーボ。悪性黒色腫(根治切除不能例)、非小細胞肺がん(切除不能な進行・再発例)に次ぐ3番目の承認で、その後、ホジキンリンパ腫、頭頸部がんでも承認を受けている(2017年3月現在)。
*オプジーボ=一般名ニボルマブ
T細胞にがんを攻撃してもらう
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞を直接叩く細胞傷害性抗がん薬や分子標的薬とは違い、ヒトの免疫細胞であるT細胞が本来持つ異物を攻撃しようという働きを賦活化(ふかつか)させようというものだ(図1)。
がん細胞は、PD-L1という物質を細胞表面に作り出している。この物質がT細胞のPD-1受容体と結合すると、T細胞ではがん細胞を異物と見なさなくなり、攻撃にブレーキをかけてしまう。その結合部位をチェックポイントというが、それを阻止することで、T細胞の持つ本来の攻撃力を復活させ、がん細胞を叩いてもらおうというのが免疫チェックポイント阻害療法だ。オプジーボは、T細胞側のPD-1に結合することで、がん細胞のPD-L1との結合を阻害する。これにより、がん細胞への攻撃を呼び覚ますことができるのだ(図2)。
腎細胞がんには2016年に承認
腎細胞がんに関しては「根治切除不能または転移性の腎細胞がん」に対しオプジーボが2016年8月に承認された。
適応の根拠となったのは、日本も参加した国際非盲検ランダム化比較第Ⅲ相臨床試験(CheckMate-025試験)。既治療の根治切除不能または転移性の腎細胞がんを対象に、オプジーボの有効性がmTOR阻害薬*アフィニトールを対照に比較された。
その中間解析の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値は、アフィニトール群の19.6カ月(95%CI[信頼区間] 17.6~23.1)に対し、オプジーボ群では25カ月(同21.7~推定不能)と、有意な延長が示されたのだ〔ハザード比0.73(95%CI 0.60~0.89)、P=0.0018〕。
腎細胞がん治療の歴史としては、有効な抗がん薬がない時代が続いたが、分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)の登場で2008年に*スーテント、12年に*インライタ、14年に*ヴォトリエントが使用されるようになり、治療効果が上がっていた。そこに最先端の免疫チェックポイント阻害薬の適応となったわけだ。現時点でのオプジーボの適応は、分子標的薬に取って代わるのかというとそうではなく、それらを試みた後の「二次治療」としての位置付けだ。「分子標的薬がなくなるのではなく、武器が増えたという認識です」と北野さん。
*アフィニトール=一般名エベロリムス *スーテント=一般名スニチニブ *インライタ=一般名アキシチニブ *ヴォトリエント=一般名パゾパニブ
腎細胞がんへの作用はミステリアス
北野さんは「腎細胞がんは免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいがん種の1つです。泌尿器のがんはほかのがんとキャラクター(性質)が大分違うようです。メラノーマや肺がんでは、日光曝露や喫煙による遺伝子の傷がもたらす体細胞変異の数が多ければ免疫はがんを異物と認識して攻撃します。多くのがんは遺伝子変異の数が多いと免疫療法が効きやすいと言われているのですが、腎細胞がんはミステリアスで、遺伝子変異の数はそんなに多くないのです。次世代シークエンサーを用いてがん種ごとの遺伝子変異の数を網羅的に数えて報告した論文がありますが、腎細胞がんは、真ん中よりより下くらいにランクされていました。それでも免疫療法が効く。がんのキャラクターにより何が違うのかということは私自身も含めて世界中で研究が進められています」
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