マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第23回 正しく恐れることの難しさ <半達人座>
家にはあと1ロールしかトイレットペーパーがないと気づいて、ドラックストアに行ったらなんとなんと6軒回ってどこにもトイレットペーパーがない! 普段は行かない店をのぞいても、やっぱりない!
デマから始まったトイレットペーパー不足、笑っていたけどないと困るのですよ。死ぬわけではないけど、やっぱり困るのです。
でも考えてみれば、インドでは高級ホテルや外国人用レストラン以外、基本的にトイレットペーパーは使いません。少なくとも10年前はそうでした。容器に水を入れてトイレに持ち込み、用を足した後は水ですすぎます。人力ウォシュレットです。そして雫(しずく)は「サリーの端でさっと拭いちゃうの」と、友人は明るく言ってました。
どうした? 清潔好きな日本人が伝染病にはゆるい
トイレットペーパーは国内で作っているから在庫は十分にありますと政府は喧伝するが、だったら「官邸前にでもビル1個分くらい山積みして売ってくれ」と言いたい。
トイレットペーパーは1週間ぐらいで入手できるようになりましたが、マスクは相変わらず入手困難です。
「マスク、ありますか?」と聞いたら、「あるわけないでしょ」と怒られそうな気がして、なかなか聞けないでいたら、スーパーやドラッグストアの店員さんたちは、「すみません、申し訳ありません。マスクは品切れです。入荷の予定もわかりません」と何度も頭を下げ続けて、疲れ果てているのだそう。電車の中でも、マスク姿が最近では心なしか減ってきたような。
新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な規模で進んでいますが、フランスに住む友人から「日本、大丈夫か?」と心配のメールをもらいました。
「あの清潔好きな日本人が伝染病にはなんだかゆるい、どうしたんだ?」という声が海外で上がっているのだそうです。
免疫力を高める食べ物として、キノコ類、海藻、かんきつ類などのリストアップが添付されてました。
正常性バイアスの怖さ
ところで〝正常性バイアス〟という言葉をご存じですか?
予期しない事態に直面したときに、「ありえない」「考えたくない」という心理状況に陥りやすい人間の特性のことを指すのだそうです。正常性バイアスが働くと、予期しない事態が発生しても、私たちは自分が直面している状況が日常とさほど変わらない状態(正常な状態)であると半ば自動的に認識しようするというのです。
災害と言えばまず地震、そして巨大台風を思い浮かべてましたが、伝染病ですか……。
あの東日本大震災で、町長をはじめ40人の職員らが津波の犠牲となった岩手県大槌町。大きな地震の揺れがあってから10メートルを超す大津波に襲われるまでの35分間、職員たちがどのような行動をとっていたのか。生き残った職員ら30人から聞き取りを行い、2019年500ページに及ぶ証言記録がまとめられ、それをもとにしたドキュメンタリー番組を見ました。大津波警報が出ていたにもかかわらず、結果的に見れば、津波に対して十分な危機意識を持たなかった人たちが少なくなかったということになります。
震度6強の揺れの後、庁舎の前庭で確かな情報を得ようと様子を見ているうちに、津波が押し寄せて、ようやく事態の深刻さに気づいたというのでした。
その35分間、多くの職員らは正常性バイアスに縛られていたとも言えるでしょう。
今だからこそ、心を落ち着ける座り方
今、日本で、世界でいったい何が起きているのか。
「この1、2週間が正念場です」と首相がイベントなどの自粛、時差出勤やテレワークの実施を要請し、次いで全国の小中高等学校の休校を勧めてから、ちょうど1週間が経ってこの原稿を書いています。
世界で4,000万人、日本で40万人が亡くなったというスペイン風邪の流行は、今から100年前のことです。毎年日本ではインフルエンザに約1,000万人がかかり、3,000人くらいが亡くなっていると推計されます。
しかし、今回の新型コロナウイルスは、SF的展開というくらいの劇的な変化を起こしています。あの無観客の大相撲中継! 日経平均株価は2万円を切り(3月9日現在)、経済は計り知れない打撃を受けることになるでしょう。
それにしても只中にあって、正しく恐れるというのはなんとまあ難しいこと。
1回1~3分でもしっかり腰を据えて、心を落ち着ける座り方を紹介します。
私がよく行うのは<半達人座>です。
あわせて、いまSNSで話題になっている「疫病封じに霊験あり」と江戸時代に肥後(熊本)地方に伝わる半人半漁の妖怪アマビエも紹介します。「私の姿を絵に描いて人々に見せよ」と言い伝えられているそう。なんだかほっこりしました。
<半達人座>
①左足の踵(かかと)を手前に引き寄せる。足の甲を下に向け、右腿(もも)に敷くようなイメージで。
②右膝(ひざ)を折り、左腿の下に敷く。右足の太腿とふくらはぎの間に左足先を挟んだ形になる。右足先を同じように右太腿とふくらはぎの間に入れるようにすると達人座。ここでは左腿の下に敷いている半分だけの達人座。
③両方の座骨を意識して、体重を左右の座骨に交互にかけ、身体を左右にゆっくり揺さぶる。さらに尻の肉を後ろに引っ張り出して伸ばすようにすると座が安定する。
③に戻る。仙骨部をしっかり立てて、両手は楽に膝に伸ばし、そのまま軽く目を閉じて、ゆったり呼吸。今している呼吸のプロセスに注意を向ける。1~3分この姿勢をキープするだけで、気持ちが落ち着く。
がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp
●こころとからだクリニカセンター
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