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マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第26回 不要不急ですが何か? <鋤のポーズ>

森川那智子 こころとからだクリニカセンター所長
発行:2020年7月
更新:2020年7月

  

もりかわ なちこ こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。『なんにもしたくない!』(すばる舎)『リラックスヨガ』(成美堂出版)『心がラクがずっと続くヒント』(青春出版社)など著書多数

「不要不急の外出は控える」は自粛時の決め言葉です。台風の直撃が予測されるようなときにも使われます。50年に1度の強い暴風雨だから、「不要不急の外出はなるべく控えるように」とか。

知り合いの料理屋さんをやっている女性が、ニュースでこの言葉が流れると「ほんと腹立たしい」とおっしゃる。「天気予報だけでいいじゃない。不要不急の外出は控えるようにとか余計なお世話、営業妨害よ。予約は次々キャンセルされるし、TVは煽(あお)ったほうが視聴率が上がっていいのでしょうけどね」ですって。

今回の新型コロナウィルスの自粛要請では、台風とは比較にならない打撃を受けているはず。想像するだけで胸が痛みますが、彼女なら工夫を凝らし、政府の助成金もちゃんと受け取って、サバイバルするに違いありません。

解剖学者・養老孟司氏が朝日新聞に寄せた傑作エッセイはこんな文章で始まります。

「新型コロナウィルスの問題が生じ、関連する報道が盛んになって、まず印象に残った言葉は『不要不急』だった。妻と娘は外出制限で不要不急の脂肪がついたという。私は80歳を超え、当然だが公職はない。この年齢の人なら、非常事態であろうがなかろうが、家にこもって、あまり外には出ない。出る必要がない。今の私の人生自体が、思えば不要不急である……」(2020/5/12)

同感。思えば私たちの日常は不要不急で成り立っています。

大変なときには、人にも自分にも寛容さを

新型コロナウィルスによるパンデミックは、その第1波でさえ終息するどころか、世界的に見て、まだピークも迎えていないそうです。報道を見ていると、パンデミックはそれぞれの社会が平時にまとっている体裁のよい顔をはぎ取り、根深い問題を次々と露わにするきっかけにもなっているようです。

例えば、米国の警察官による黒人暴行死。それに抗議する集会やデモがエスカレートし、各地で暴動が起こっているというニュースに接したとき、「マジ? やばくね⁇」でした。しかし根深い差別に抗議するデモは広がりを見せ、深みを増し、国際的なうねりを引き起こしているというダイナミックな動き。いかにも米国だなあ、それにしてもソーシャルディスタンスはどうなっているのだろうか………。

日本はなんとか持ちこたえているように見えて、その実、同調圧力の息苦しさが高まって「やばくね」ではないでしょうか。

コロナに感染したことを「不徳の致すところ」とか「申し訳ありません」と謝りますよね。全然謝るようなところではないのにと思いつつ、もし自分が感染したことを想像すると、開口一番「周りに迷惑をかけて申し訳ない」と平身低頭、反省しそうです。それもこれも含めて、「コロナが怖い、いえいえ、世間が怖い」です。

でも、その怖い世間は、自分の中にある「世間」なんですよね。人の目、世間の目を内面化している日本人だからこそ効果を発揮する自粛です。

そして自粛が段階的に解除されて、Withコロナの「新しい生活様式」が求められ、今年も予想される猛暑と相まって早くも熱中症状態。

わたしたち日本人はともすれば過剰適応しがち、こんな危機のときに、人にも自分にも寛容さが足りなくなる傾向があることに気づきたい。

疲れには免疫力を高め、全身の血行を良くし緊張を和らげるポーズを

最近はコロナ疲れというか、暑さのせいもあると思うが、疲れが自覚され始めています。

そこで前回紹介した<項(うなじ)をほぐすポーズ>の続きを紹介します。免疫力を高め、全身の血行を良くし、緊張を和らげます。前回ポーズを行って、自分の体の重み(自重)を使って肩や首の裏(項)に適度な刺激を与えて血行が良くなっていく気持ちよさを味わっていただけましたでしょうか。

気持ち良いと感じた方に、もう一歩前進していただく<スキのポーズ>を勧めます。このポーズが一番好きという人が結構います。その人たちは<好きのポーズ>と思っているのですね。でも実は、土を掘り起こすのに使われる農具「鋤(すき)」なのです。なんで鋤かというと完成ポーズを見ると納得します。体位が逆転されるので、果汁いっぱいのジュース瓶を逆さにして全体によく混ぜるあの感じで、自分の血液や体液がゆっくりまんべんなく混ぜられて、滞(とどこお)りが消えていく実感がします。自分の体を内側から耕してくれます。

でも、少しでも怖いと感じたら、<項をほぐすポーズ>までとしましょう。

今回動画でヨガを実演してくれた清水由紀子さん、ヨガインストラクターのほか、「声のお仕事」もしているマルチな才能の持ち主。彼女にとっても「喉のセルフケアに<鋤のポーズ>は欠かせない」のだそう。

<鋤のポーズ>

①仰向けに寝て、両膝を立てます。両腕を大きく上方にぐぐーっと伸ばして、姿勢を整えます。顔は天井に向け、もし髪を後ろに束ねているようなら、側頭部にずらすか解きます。

②両腕を体側に沿って伸ばし、手のひらは下に向ける。

③軽く息を吸ってから、吐く息で両膝を胸のほうに引き寄せる。このとき、尻が床から少し浮く。そのまま息を吸いながら両脚を斜め上方(まっすぐ天井に向かうのではなく、頭のほうに20度くらい傾斜する)に引き上げると、さらに尻が浮く。ついで吐く息で、両腕で床を押し、その反作用を使って腰や背中も立てていく。

④両手で背中を支えて背中を立て、顎(あご)を喉に引きつけ、肩をリラックスさせて、首や肩に自分の重みがかかっていると感じられれば良いのですがどうでしょう? 両足のつま先を床につけることを優先させようとすると、胸部に負担がかかることもあります。膝もまっすぐ伸ばそうとしなくていい。ゆったり伸ばせたらいい。そのままこの姿勢でできる楽な呼吸(自然呼吸)を4~8回続ける。

⑤自然呼吸のまま、背中の上のほうから徐々に床に戻していく。腰部が床につき、尻がついたら、膝を立てて、体をゆらゆらくねくねという感じで緩めながら動かしてみよう。体にそなわっている自然な調整力が働いてくれます。

⑥それから両足を腰幅より少し広めに開いて伸ばし、両腕も腋(わき)を緩めてゆるやかに伸ばして、<完全なくつろぎのポーズ>をとる。腰に違和感がある人や腰痛経験者は、どちらか一方の膝(両膝でもいい)を立てると楽になる。

1セット。もう1セット行うには、カップリングするポーズが必要なので、それは次号で紹介します。

 

がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp

こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/

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