マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第59回 生きているかぎり生きている<安坐で行うねじりのポーズ>
評論家の立花隆さんが存命中、先端的ながん研究を世界各地に精力的に取材したTV番組(2009年度放送)をアーカイヴで見ました。
自ら膀胱がんがわかった日から、手術のシーンもすべて映像に残すように担当ディレクターに指示したということでした。
手術後、「すごく面白かった。手術の映像はもらえるのかね?」
深刻な自分の病すら興味の対象にしてしまいます。
「知の巨人」と評された人にふさわしい、徹底した論文収集と分析。膨大な資料を消化吸収しながら、合理的、科学的なアプローチで研究者たちにインタビューを繰り返します。そして、関心は次第にがんの治療法より、がんとは何かという根源的な問いに迫っていきます。
「がんは生命の仕組みと分かちがたく結びついている」
「人間は不死ではなく、死ぬべき運命にあるということだけど、人は死すべき運命にあることを自覚したとたん、その運命を乗り越えることが、できるのではないか」とも。
「あたりまえだけど、死ぬ瞬間まで、私たちは生きている」
ステージ○○とはまた別のステージがある
あるとき、わたしは何気なく「末期がん」という言葉を使ってしまいました。
その方の母親のがんについて話していたときのことです。
彼女が「やっぱり末期なのですかねえ……」と言われたのです。
そのとき、立花隆さんの言葉を思い出しました。
そうですよね。大切なことは末期とか初期とかそういうことではなくて、いま生きているということそのもの。そして、この今という瞬間をどう生きていくかです。
私はいま、乳がんサバイバーのための「ヨガとトーク」のセッションをささやかにやっています。この会を始めたシノリエさんが逝去してもうすぐ1年が経とうとしています。わたしはその会を継続していくことになりましたが、そのシノリエさんが、
「1日でも長く元気に生きていることが大事です。だって、その間にがんを消滅させる新薬や治療法ができるかもしれないのですから」とよく言っていました。
主治医の先生がそう言って、支えてくれたというのでした。
落ち込んでいたとき、どうもがいてもやがて転移か再発かしてがんで死ぬんだと、無力感に陥り抑うつ状態に陥っているとき、主治医の先生にそう言われて、その言葉がだんだん沁みてきたのだと言ってました。
生きていれば奇跡だって起こりうる。死んでしまえば奇跡は起こらない。
そんな当たり前のことに気づかされます。
そして、自力で立てなくなったときにLINEを使って「いま、わたしはとっても幸せです」と、感謝のメッセージを動画でメンバーに届けました。
そのとき、そのとき、元気があってもなくても、弱くても弱いまんまで、自分にできることを誠実にやり遂げていました。
背骨をねじりた~い
根源的な問いにしっかり向き合っていこうとすると、ともすれば首肩が緊張してきます。背骨をいろんなやり方でねじることで向き合い方も深まっていけそうです。
哺乳類の中で背骨をねじることができるのはホモサピエンスだけではないかと思います。馬や牛が背骨をねじっている姿は想像できません。猫にはできるかもしれませんが、反射的な動きです。
ヨガでは背骨をねじり、ねじったままにしばらくとどまります。その行為にわたしは生命力を感じます。というのも実際やってみると、体の内側から熱さが広がり、汗ばむくらいなのです。
これから何回かに分けて背骨をねじる系統のポーズを紹介していこうと思います。
やってみて気持ちいいと感じられるポーズが、いま、自分に必要なポーズです。
<安坐で行うねじりのポーズ>
①安坐で座ります。安坐とは、まず左足のかかとを恥骨に引き寄せ、右足のかかとをその外側に、左右のかかとを前後に並べるように引き寄せます。
これが基本ですが、足の位置がずれることもあります。坐骨や骨盤に安定しているなら、ずれてもOKです
②床に接しているお尻の肉を後ろに手でかきだすようにすると、坐骨が後方に1~2㎝ずれて、マットをしっかり感じられます。そのうえで肛門を軽く閉じ、骨盤底を安定させます
③右手は、掌を浮かし指の腹でつく形状をカップハンドといいますが、カップハンドでお尻の後方に置きます。左手は右足の腿に置きます。らくに置けるところに置きます
④息を吐いて坐骨でマットを押し下げ、吸う息で頭部を上方に引き上げるようにしたら、ゆっくり息を吐きながら脊柱を意識して、腰椎、胸椎、頚椎と下方から順々に右へねじっていきます。視線も右いっぱいに。ドライアイ気味の場合、目は閉じてもOK。らくな呼吸でこの姿勢を保持します。3~4呼吸
⑤もう一段階ねじりを深めます。坐骨でマットを押し下げ、頭部を引き上げ、左手でしっかり右腿を押しながら、もう一段階右へねじり3~4呼吸
⑥大きくゆったりと息を吸いながらねじりをほどき、両手を膝に伸ばして吐く息でフーッと余分な力を抜きます。次に左方向に同様にねじって1セット。そのあとは足の前後を反対にしてもう1セット行います
がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp
●こころとからだクリニカセンター
PC www.kokokara.co.jp/
携帯 www.kokokara.co.jp/m/
同じカテゴリーの最新記事
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第77回 「やけたトタン屋根の上の猫」<マインドフルネスの実習>
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第76回 これは始まりに過ぎない?<椅子を使った背中立ちのポーズ>
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第75回 誰も幸せにしない過剰な接客サービス<なんちゃってハトのポーズ>
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第74回 検査にともなう不安や緊張<ハトのポーズ>
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第73回 天竺とインド 〝遠い〟or〝近い〟<T字のポーズ>
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第72回 アフター・コロナ<半月のポーズ>パート2
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第71回 春の月を味わう<半月のポーズ>
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第70回 変化の大きい季節のケア<ウサギのポーズ>
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第69回 やっぱりお日さまの力はすごい<ラクダのポーズ>
- マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第68回 これこそ「温故知新」といえるのかも<片ラクダのポーズ>