悪性線維性組織球腫の診断、治療の方法を知りたい

回答者:川井 章
国立がん研究センター中央病院 整形外科医師
発行:2009年7月
更新:2013年11月

  

半年ほど前から右足のふともも(大腿部)に腫れが出てきました。歩きづらくなっています。近くの病院で診てもらったところ、軟部腫瘍の1つの悪性線維性組織球腫が疑われるとのこと。診断には、針を刺して組織の一部を取り出して、その性質を調べる検査が必要とのことでした。診断は、画像診断だけでは難しいのでしょうか。また、治療法は、手術しかないのでしょうか。なるべく、痛くない治療法を選びたいと思います。

(青森県 女性 61歳)

A 診断は切開生検、治療法は手術が基本

画像診断は、あくまでも腫瘍の広がりとか、腫瘍内部の様子を外から見るための検査です。最終診断のためには、画像診断だけでなく、組織診断が必要となります。とくに、悪性腫瘍が疑われるとのことですから、手術の方法や、化学療法などの治療方針を間違いなく決めるうえで、やはりどうしても組織診断をきちんと行うことが重要と考えます。

組織診断のために腫瘍の一部を取ってくる方法のことを、生検といいます。軟部腫瘍の生検には、2つの方法があります。1つは、腫瘍に針を刺して組織を採取する針生検です。外来で、局所麻酔をして、15分ぐらいで終わります。

針生検のメリットは、小さな侵襲で終わること、外来で迅速に行えることです。デメリットは、採取できる量が少ないため、診断のつかない可能性が10~20パーセントほどあることです。もう1つは、切開生検です。針生検よりも大きな小指の先ほどの腫瘍組織を取って調べる診断のための手術です。入院して、手術室で小さな手術をします。メリットは、診断に必要な組織を確認して取れるため、針生検よりも正確な診断がつく確率が高くなります。デメリットは、手術室での手術になるため、1~2泊の入院が必要となることです。

針生検で診断がつけばよいのですが、前述したように、診断がつけられないケースがあります。

良性と悪性の診断を間違えると、患者さんによっては、最善の治療が受けられないなどの不利益になることがあります。そこで、現状では、骨軟部腫瘍を専門にしている整形外科医や、病理医の中には、切開生検のほうが安全でないかと考えている方がたくさんいます。軟部腫瘍は、発生頻度は少ないのですが、組織学的にはたくさんの腫瘍が含まれます。化学療法が効く腫瘍もあるし、効かない腫瘍もあります。再発しやすいもの、おとなしいものがあります。針生検ですべてよし、といえない理由はそこにあります。

生検で採取した腫瘍組織は、通常の顕微鏡での検査に加えて、必要に応じて特殊な免疫染色や、遺伝子解析等を行います。そのための期間として、病理診断には、通常1~2週間を要します。

軟部腫瘍の治療法は、手術が基本です。きちんと治すためには、腫瘍の性格、広がりにあわせてよく計画された手術が必要です。手術に加えて、補助化学療法を行ったほうがよい場合や、さらに放射線療法を加えたほうがよいこともあります。また、腫瘍が関節や、血管、神経の近くに存在する場合には、それらの組織を残せるかどうか、どのように再建するかを判断して、できるだけ機能障害が少なく、しかも再発リスクを小さくする手術が求められます。

骨軟部腫瘍は稀な病気ですが、その診断と治療のためには専門的な知識を必要とします。痛みに関しても、最近では様々な痛みをとる治療法が開発されてきました。

大学病院、各地の地域がんセンター、日本整形外科学会の設けている骨軟部腫瘍相談窓口の担当医の所属する病院や、骨軟部肉腫治療研究会(JMOG:Japanese Musculoskeletal Oncology Group)のメンバーが所属する病院などの医師とよく相談してください。

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