リンパ節郭清不能。今後の治療は?

回答者・上野貴史
板橋中央病院 外科医師
発行:2014年3月
更新:2014年6月

  

8年前に乳房温存術を行いました。その3年後に10個のリンパ節を郭清し、ホルモン療法(ルミナルB)を行ってきました。先日、残りのリンパ節に転移が認められましたが、腕神経叢を圧迫しているためほとんど握力がない状態で、動脈血管を噛んでいるので手術はできないと言われました。他臓器への転移はありませんが、潰瘍性大腸炎も患っています。

現在は鎮痛薬(オキシコンチン)を内服しています。今後の治療法を教えてください。

(54歳 女性 愛知県)

ホルモン療法+放射線併用療法、ペインクリニック受診も

板橋中央病院外科医師の上野貴史さん

潰瘍性大腸炎とは、何らかの原因により、大腸の粘膜に潰瘍やただれが起きる自己免疫疾患のことで、厚生労働省より特定疾患治療研究事業対象疾患(難病)の1つに指定されています。

しかし、潰瘍性大腸炎を患っているからといって、よほど重症な段階でなければ、がん治療ができないということはありません。抗がん薬の副作用による盲腸炎や下痢の発現などに注意しながら、通常の治療が行えるケースがほとんどです。

腕神経叢を圧迫しているとのことですが、神経症状がどの程度かにもよりますが、腕神経叢にがんが浸潤すると、肩や上肢の痛みが現れ、しびれやむくみ、筋力低下が進みます。これを腕神経叢浸潤症候群といいます。

この神経障害の進行を少しでも抑えるため、放射線治療を施行していない場合は、行ったほうが良いケースがあります。

ホルモン療法による全身療法の継続と、放射線療法による局所療法の併用療法が、がんの進行を抑える一般的な治療法となります。

ホルモン療法に抵抗性が生じていると判断されれば、抗がん薬による化学療法となります。神経浸潤による症状がひどくなった場合は、オキシコンチンだけでは有効でないことが多く、ステロイド薬や他の鎮痛補助薬の併用も必要となることが多いです。治療が難治な場合、神経ブロックなどが考慮されることもあります。痛み治療が専門のペインクリックの医師と相談することをお勧めします。

オキシコンチン=一般名オキシコドン塩酸塩水和物

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