腫瘍マーカー上昇。今後の治療法は?

回答者・上野貴史
板橋中央病院 外科医師
発行:2014年3月
更新:2014年6月

  

FEC療法(術前化学療法)後に左乳房小葉がん全摘+腋窩リンパ節郭清術を受けました。皮膚と乳頭に浸潤があり、リンパ節8カ所に転移がありました(ホルモン陽性・HER2陰性)。術後に、放射線治療とホルモン療法(ノルバデックス)に入りましたが、PET検査で左腋窩から左鎖骨窩にかけて淡い集積が見つかりフェマーラに薬剤を変えました。現在もホルモン療法(フェアストン)を継続中ですが、術前化学療法時から腫瘍マーカーが毎月上昇しています。ただ、画像に腫瘍などは映っていないそうです。今後は抗がん薬療法となるのでしょうか?

(48歳 女性 富山県)

ホルモン抵抗性の有無を判断する

板橋中央病院外科医師の上野貴史さん

PET検査で淡い集積が見つかり、腫瘍マーカーが上昇を続けているともありますので、再発の可能性が高いと思われます。

ホルモン療法は、1度効果がありその後に効かなくなった場合は、薬剤を変えることで再度試みます。しかし、薬剤を変えても、1度も効果が現れない場合は、ホルモン抵抗性が高いと考えられ、抗がん薬治療へと変えることが一般的です。

ただし、ホルモン抵抗性の有無の判断は絶対的なものではありません。質問者の場合、再発による症状は何もないようですから、次のホルモン薬としてフェソロデックスを試してみることも良いかもしれません。

その理由として、乳癌診療ガイドラインに従えば、術後経過観察にPET検査やマーカー測定は通常施行しないため、もしこれらの検査をしてなければ、再発も見つかっていない可能性が高く、副作用の強い抗がん薬治療を早期に開始することが、本当にメリットになるかどうか不明だからです。

また、近いうちにフェマーラ治療後のホルモン陽性・HER2陰性進行性乳がん患者さんに対する新たな分子標的治療薬として、アフィニトールが追加適応される予定です(14年1月現在)。
副作用がやや強いですが、今後、抗がん薬へ移行する前に、アフィニトール+アロマシンが試せるかもしれません。

FEC療法=フルオロウラシル(商品名5-FU)+エピルビシン(商品名ファルモルビシン)+シクロホスファミド(商品名エンドキサン) ノルバデックス=一般名タモキシフェン フェマーラ=一般名レトロゾール フェアストン=一般名トレミフェンクエン酸塩 フェソロデックス=一般名フルベストラント アフィニトール=一般名エベロリムス アロマシン=一般名エキセメスタン

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