肺転移などに効果のある抗がん剤は?

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2008年10月
更新:2013年11月

  

2年前に乳がんと診断されました。がんは乳房の中で広がっていて、大きさは5センチほどで、全摘手術を受けました。リンパ節転移は6個と多く、ハイリスクグループと言われました。手術の2日後にFEC療法とタキソテール(一般名ドセタキセル)をそれぞれ4クール受け、その後、ホルモン療法としてアリミデックス(一般名アナストロゾール)を内服しています。しかし、今年の3月に、全摘したところと同じ箇所の、上の筋肉の中に、1.5センチのしこりが発見されました。また、CT検査を受けたところ、肺に1センチの影が3個できていました。「胸のしこりは切除してもしなくてもよい」と主治医に言われましたが、気になるので手術してもらいました。今は、ホルモン療法としてノルバデックス(一般名タモキシフェン)を内服しています。アリミデックスはあまり効果がなかったので、様子を見て、化学療法に切り替えると言われました。HER2タンパクは1+のため、分子標的薬のハーセプチン(一般名トラスツズマブ)は効果が期待できないと言われ、タキサン系の抗がん剤は以前使用しましたが効果はあまりありませんでした。今は肺転移の状態ですが、咳などの症状は何もありません。今後、有効な抗がん剤治療はありますか。

(京都府 女性 59歳)

A ゼローダやナベルビンなどが考えられる

治療の流れは一般的ですし、適切だと思います。ホルモン療法を受けていることから、ホルモン感受性は陽性なのでしょう。また、文面から判断すると、遠隔転移が起きている状態です。現状では、根治は難しいため、症状が出ない期間を延ばすことを治療の目的にするのがよいと思います。

そう考えると、症状がない状態で抗がん剤治療を行うのはあまり得策ではありません。抗がん剤治療の副作用により、QOL(生活の質)が下がることがあるからです。その意味でも、「タモキシフェンで様子を見る」のは妥当だと思います。

今後、何らかの症状が出た場合は、タキサン系やアドリア系の抗がん剤をもう1度、使用するという方法もあります。タキサン系の抗がん剤は以前、使用しても効果があまりなかったようですが、この「以前」の意味が術後補助療法のことであれば、再チャレンジすることで、効果が現れる可能性もあります。逆に「以前」の意味が1年以内であれば、タキサン系の抗がん剤には耐性が生じている可能性が高く、あまり薦められません。同じタキサン系の抗がん剤でも、タキソテールが効かなくても、タキソール(一般名パクリタキセル)が効くことも稀にあるし、その反対のこともあります。

これまでに使用していない抗がん剤では、ナベルビン(一般名ビノレルビン)とゼローダ(一般名カペシタビン)が考えられます。

前記の抗がん剤は、体の状態や症状などによって、単剤で使うか、併用するかなどを検討します。たとえば、タキソテールとゼローダを併用する場合もあります。

HER2タンパクの1+は「陰性」を意味しますから、ハーセプチンなどの分子標的薬治療の対象にはなりません。

FEC療法……5-FU(一般名フルオロウラシル)+ファルモルビシン(一般名エピルビシン)+エンドキサン(一般名シクロホスファミド)

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