骨転移の治療中にゾメタを中止。今後の治療は?

回答者:川端 英孝
虎の門病院 乳腺内分泌外科部長
発行:2008年4月
更新:2013年11月

  

2004年12月、乳がんが発見されました。すでに脊椎に転移していて、まったく歩けませんでした。しかし、抗がん剤やアレディア(一般名パミドロン酸二ナトリウム)などの治療を受けて、歩けるようになりました。 2006年1月に右乳房リンパ全摘出手術を受けました。それ以降、ゼローダ(一般名カぺシタビン)とアレディア〔途中でゾメタ(一般名ゾレドロン酸)に変更〕の治療を受けていましたが、去年の12月からゾメタは中止しました。現在はゼローダのほか、鎮痛剤、便秘薬などを服用しています。 胃、膵臓、腎臓、肝臓、肺などには今のところがんの転移はないが、PET検査などから顎の骨には転移しているだろう、と言われています。右のわき腹、右の腰、右脚などに痛みがあります。 ゾメタを中止したことと関連して、次の3点について伺います。 (1)体全体の骨に何らかの変化が現れるでしょうか。 (2)がんが転移して、溶解した骨の部位の状態に何らかの変化が現れるでしょうか。 (3)骨転移が加速する可能性はありますか。また、ほかに適切な治療法はあるでしょうか。

(神奈川県 女性 75歳)

A 痛みや骨の変化が強ければ、リニアックによる放射線治療も

初めに、ゾメタという薬剤について整理しておきます。 ゾメタはビスフォスフォネートという系統の薬で、この系統の薬には骨吸収を抑制する作用があり、骨粗鬆症の治療薬として広く用いられています。なかでも点滴薬であるゾメタは作用が強力で、乳がんなどの骨転移や、がんに関連した高カルシウム血症の治療薬として用いられています。

アレディアはゾメタの一世代前の薬剤でかつては第1選択薬でしたが、ゾメタが保険適応になって以降はあまり使われなくなりました。

ゾメタには主に、骨吸収を抑制し、骨転移によって骨が強度を失うのを防止し、骨転移による骨折、痛みの頻度を減少させる作用があります。このため乳がんの骨転移と診断された時点で、通常はゾメタの点滴を4週に1回程度のペースで開始します。この治療はがんが進行していても使い続ける場合が多く、多くの患者さんで何年にもわたって使い続けます。

ゾメタに関する研究を見ると、ゾメタにはがんの進行を止める効果はなく、骨転移によって骨が溶けるのを予防する効果があると理解できます。このため中止しても、骨転移が加速することはなく、また、急速に骨が溶け始めることまでは考える必要はないと思います。変化はもっと緩やかで、2~3カ月程度の中止では、骨の強度にはあまり影響ないと思います。

さて、質問内容からは、ゾメタを中止した理由が定かではありません。顎の骨に転移しているだろうと言われたようですが、ゾメタを中止したのは、転移ではなく、顎骨壊死を疑われたからではないかと推察します。

顎骨壊死は、稀ではありますが、ビスフォスフォネートの重篤な合併症で、ビスフォスフォネートを投与中の人が抜歯などの処置を受けると起きやすくなると報告されており、もし抜歯が必要な場合は、原則としてビスフォスフォネートをしばらく中止してから行います。顎の症状なり検査所見が、骨への転移か、薬の副作用か明確ではないため、念のためにゾメタを中止したのだと思います。

ご質問の文面にはホルモン療法やハーセプチン(一般名トラスツズマブ)に関する記載がないため、ER、PR、HER2のすべてが陰性のいわゆるトリプルネガティブといわれるタイプの腫瘍と推察されます。このタイプの乳がんは比較的、悪性度が高く、また薬物療法も抗がん剤中心にならざるを得ないため、治療の選択の幅が狭いことが難点です。今後は残された抗がん剤をタイミングよく使い、痛みや骨の変化が強ければ、リニアックによる放射線治療も考慮する必要があります。また最近、メタストロン(一般名ストロンチウム89)という静脈注射用の放射性医薬品が保険適応となったので、この薬剤による痛みの緩和治療も選択肢に入ると思います。

ER=エストロゲン受容体、PR=プロゲステロン受容体

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