4期の乳がん。ハラヴェンは効果があるか

回答者:上野 貴史
板橋中央総合病院 外科医師
発行:2011年11月
更新:2015年2月

  

今年に入って乳がんと診断されました。すでにがんが肝臓に遠隔転移している4期と診断され、主治医から「手術はできない。抗がん剤による治療を行います」と言われました。その後、AC療法(アドリアシン)+エンドキサン)、タキソールによる治療を行いましたが、効果はあまりよくありません。そうした中、主治医から、新しくハラヴェンという薬が承認されたと聞きました。ハラヴェンとはどういった薬剤なのでしょうか。私に使って効果はありますか。

(福岡県 女性 52歳)

A 進行再発治療で唯一、単剤で生存を延長させた薬。使う価値はある

ハラヴェンは、今年7月に発売された、日本発の新しい乳がん治療薬です。乳がんの抗がん剤治療はアドリア系とタキサン系と呼ばれる薬剤が2本柱ですが、これらの薬剤に耐性が生じた場合、次に使うのはゼローダやナベルビンといった薬剤でした。そうした中、新たな治療選択肢としてハラヴェンが加わったのです。

ハラヴェンは日本の油壺でとれたクロイソカイメンという海洋生物で見つかった、抗腫瘍効果のある分子から開発された薬剤です。

EMBRACEという臨床試験で、進行・再発の乳がん患者さんにおいて、従来の治療と比べて生存期間を有意に2.7カ月延長することが認められ、世界中で認可されました。

再発治療において有意に生存期間が延長したことは、今までの薬剤では見られなかった画期的なことだったのです。

副作用として1番多いのは骨髄抑制です。これには十分注意する必要があります。末梢神経障害も見られますが、タキサン系薬剤よりは障害は軽いことが多いといわれています。

また、投与時間が2分から5分程度と短いのが大きな特徴です。

ご相談者の場合、ハラヴェンを使ってみる価値はあると思います。主治医と今1度ご相談してはいかがでしょうか。

アドリアシン=一般名ドキソルビシン エンドキサン=一般名シクロホスファミド タキソール=一般名パクリタキセル ハラヴェン=一般名エリブリン ゼローダ=一般名カペシタビン ナベルビン=一般名ビノレルビン
骨髄抑制=骨髄の働きが低下し、赤血球、白血球、血小板の数が減少している状態。白血球・好中球減少による感染(発熱)、血小板減少による出血傾向、赤血球減少による貧血症状などが現れる
末梢神経障害=手や足にしびれが現れる症状

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