2期の舌がん。手術と小線源治療はどちらがよい?

回答者:林 隆一
国立がん研究センター東病院 頭頸部腫瘍科・形成外科科長
発行:2011年1月
更新:2019年8月

  

33歳の娘が2期の舌がんと診断されました。大きさは2センチ、リンパ節転移はなく、舌の縁にできています。気にはなっていたけど、口内炎だろうと思い、ビタミンB剤を飲んでいたそうです。手術と小線源治療という2つの治療法を提示されたのですが、完治もさせたいし、見た目が悪くなるのも嫌だし……と迷っています。どちらの治療成績がよいのでしょうか。また、治療による副作用はいかがでしょうか。

(東京都 女性 64歳)

A 治療成績は同じだが、放射線治療の副作用を考慮して手術を勧める

2センチ程度はそれほど大きいものではありませんから、基本的には手術でも小線源治療でもどちらでもいいと思います。治療成績はどちらでも変わりません。

しかし、まだ娘さんは33歳と若いので、がんを取り切るという意味と、放射線による晩期障害が起こる可能性を考えると、手術を優先したほうがよいでしょう。

放射線による晩期障害とは、1つには下顎骨(下あごの骨)の露出や骨髄炎があります。感染して骨髄炎になった場合は薬で治療しますが、ときには重篤なケースも起こりえます。2つめは放射線による2次発がんです。これらは10年も先に起こってくる小線源治療の障害です。

この晩期障害を防ぐために、最近では「スペーサ」という器具を使います。放射線があごの骨に当たらないようにアクリル製のマウスピースを装着するのです。以前はこの器具を装着していなかったので放射線潰瘍が起こり、骨が露出したり、骨髄炎が起こったりしていました。今後治療する場合は必ずスペーサをつけると思いますので、晩期障害は起こりにくくなるでしょう。しかし、小線源治療は線源管理が難しいため、現在この治療を行える施設は減っています。

手術する場合のデメリットとしては、切除範囲によっては舌の先を使うような言葉、たとえば「らりるれろ」などが発音しにくくなることがあります。また、食べ物をかんだりするときには少し違和感があるでしょう。しかし、舌は口のなかにあって見えませんから、外見的な変化は心配要りません。

若い方はあごが小さく、歯が内向きに倒れていることが多いので、舌がんは舌の縁にできやすいという特徴があります。1つ気をつけていただきたいのは、若い方のほうが悪性度が高く再発しやすいということです。そのため、経過観察をしっかり行っていくことが大切です。

小線源治療=ガンマ線など放射線を発する線源(小線源)を直接舌に埋め込んで行う放射線治療

晩期障害=治療終了後、何年も(時には10年以上)たってから出てくる放射線の副作用や合併症のこと

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