再発して肝臓に転移。治療法は?

回答者:上野 秀樹
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2012年7月
更新:2013年11月

  

ステージ3の膵がんにかかり、切除手術とジェムザールによる術後補助療法を半年間行いました。しかし、2年後、再発してしまいました。肝臓にも転移しているそうです。今後、どのような治療を行えばいいのでしょうか。

(新潟県 男性 50歳)

A ジェムザールとTS-1を使い切ることが大切

「Q:食事療法で再発を防ぐ方法はあるか?」というご質問でお答えいたしましたように、切除可能な膵がんに対しては、手術とジェムザールによる術後補助療法が現在の標準治療です。

しかし、膵がんは完治することが難しいため、再発がどうしても起こりやすいのです。

再発が発見される部位としては肝臓が最も多く、他にリンパ節、腹膜(がん性腹水)、肺などがあげられます。また、手術で切除した周囲に再発することがあり、これを局所再発と呼びます。

再発が明らかになった場合は、たとえ技術的には可能ではあっても、がんを手術で取り除くことはお勧めできません。膵がんの場合は、再切除しても早期に再発をきたし、予後が改善しないことが経験上明らかになっているためです。

したがって、膵がんの再発に対しては、切除ができない状態で発見された進行膵がんと同じように化学療法を行うことが一般的です。

なお、肝転移がみつかったときに、原発性の肝がんに有効な抗がん剤を、あるいは肺転移に対しては原発性肺がんに有効な抗がん剤を行う、と考えていらっしゃる方を時々みかけますが、これは適切ではありません。

肝臓にせよ肺にせよ、転移したがん細胞はもともと膵臓から発生したものですので、原発巣である膵がんに有効と考えられる抗がん剤を選択するのです。同様の理由で、原発性肝がんに行われている、ラジオ波焼灼療法や肝動脈塞栓術なども、通常は肝転移には有効ではありません。

再発・進行膵がんに対する化学療法では、ジェムザールが標準治療であり、最近TS-1という経口の抗がん剤も、同等の効果をもつことが明らかになりました。これらの抗がん剤は、どちらを先に使うかよりも、可能な限り両者を使い切ることが大切であると考えられています。

なお、補助療法でジェムザールを使用し、比較的早期に再発が明らかになった場合には、ジェムザール以外の抗がん剤を推奨するという考えがあります。早期に再発したがんは、ジェムザールに抵抗性となっている可能性が高いと考えるためです。 しかし、患者さんがジェムザールに抵抗性となっている可能性が高いかどうかを、判断するための明確な指標(治療終了後、どのくらいの期間で再発したのか)は今のところ無く、医師の個々の経験や判断で治療を選択しているのが実情です。

ご質問者は、補助療法としてのジェムザール終了後1年以上経過してからの再発ですので、開始される治療はジェムザールでもTS-1でも良いと思われます。その他、新しい治療の臨床試験も行われていますので、主治医の先生とよくご相談ください。

ジェムザール=一般名ゲムシタビン TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

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