腫瘍内科医のひとりごと 143 キノコはがんに効く⁈

佐々木常雄 がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長
発行:2022年11月
更新:2022年11月

  

ささき つねお 1945年山形県出身。青森県立中央病院、国立がんセンターを経て75年都立駒込病院化学療法科。現在、がん・感染症センター都立駒込病院名誉院長。著書に『がんを生きる』(講談社現代新書)など多数

2日、雨の日が続きました。狭い庭の畑にキノコの塊を3カ所見つけました。昨日までは、確かにまったくなかったのです。

砂利の中にごっそり生えています。

ネットの写真では、食べられるのか、食べられないのか、わからないので近くの野草園に持って行って訊ねてみると、食べられるハタケシメジというキノコでした。

野菜、豆腐と一緒に鍋にして煮たら、とても美味しくいただけました。

クレスチンやレンチナンは相次いで販売終了

ひと頃、サルノコシカケはがんに効くとか、キノコを食べる家庭ではがんが少ないとか言われたことがあったと思います。

キノコは、免疫力を活性化させるのではないか、と言われます。

キノコに含まれる多糖類のβ-グルカンは、免疫力を上げ得ること、アレルギーの予防、血糖値やコレステロールを下げることなどが期待されているようです。

以前は、キノコからがんの薬がつくられました。

カワラタケからつくられた抗悪性腫瘍薬クレスチンは、1976年に承認を取得して、単独で使われていましたが、胃がん、大腸がんの化学療法との併用により生存期間の延長、小細胞肺がんに対して化学療法との併用で奏効期間の延長が得られたとして効能が改められ、併用療法でのみ認められていましたが、2017年、製造販売中止となっています。

また、シイタケからつくられたレンチナンという薬剤(静脈注射)は、テガフールという抗がん薬(経口投与)との併用で生存期間の延長効果とされましたが、2018年に販売終了となっています。

クレスチン、レンチナンはがんに効くと国が認めた薬です。しかし、がんに効いたというデータは、当時はあったのですが、今のがんに効く薬物とは比較にならなくなった、つまり劣るのだと思います。これらの薬は、免疫不活剤とも言われましたが、最近ではあまり聞かない言葉になりました。

がんに関係なく楽しみたいキノコ

ひと頃、民間療法として、姫マツタケ、サルノコシカケなどが、がんに効果があると話題になりました。乾燥した姫マツタケを煎じて飲んだら、がんに効果があったらしいのです。ここでもキノコに含まれる多糖体にその作用があるらしいのです。

古梅霊芝(こばいれいし)は、古い梅の木に生えるマンネンタケ(霊芝:サルノコシカケ科)というらしく、信じている方にはとても重宝されているそうです。ある本には「数万本の梅の古木でひとつ見つかるかどうか」と書いてありました。そういえば、むかし、私の実家の縁側に乾いたサルノコシカケが1個置いてあった気がします。あれは、どうしたのか、食べた記憶はありません。

また、ひと頃、紅茶キノコも話題になったことがありました。たちまちブームのようになりましたが急激に消えてしまいました。

マツタケは高い値段で、以前、頂いたことがあったのです。そのとき、香りは良かったのですが、期待したほど美味しいとは思えませんでした。負け惜しみになりますが、食べたいとは思いません。確か、そのときは七輪で焼いたように思います。

それでも、シイタケなど、キノコはカロリーが少なく、美味しく、いろいろな栄養素を含み、秋の旬の天の恵みの食品だと思います。

がんには関係なく、楽しめたらいいなと思います。

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