保存版 医療費節約大全
医療費にまつわる疑問 Q&A
治療を受ける上で生じる悩みや疑問。このコーナーでは読者の方より編集部に寄せられた質問に医療の現場で働くソーシャルワーカーがお答えします
回答者:井田茂樹さん
独立行政法人国立病院機構
東京医療センター医療福祉相談室
ソーシャルワーカー
Q1:同じ病院で2度も初診料を請求された!
病院を受診した1カ後、同じ病院なのにまた初診料がかかりました。なぜ2回目以降も初診料がかかるのですか?
A1
診療を受けてから1カ月以上経過して診察を受けた場合は、診療内容によっては初診料を請求しても良いことになっています。定期的に通院されている場合や、以前と同じ病気が治癒しないまま、再度受診した場合には初診料はかかりません。しかし同じ病気であっても、自分から治療を中断した場合には、あらためて初診料がかかりますので注意して下さい。同じ病気かどうか、治癒したかどうかの判断は医師が行いますので、初診になるか再診になるかは分かりづらいところです。
同じ病気で受診したのに初診料がかかった場合など疑問があれば、医療機関の事務に確認してみることをお勧めいたします。決して間違いがないとも言えません。
Q2:薬代を少しでも安くできないか?
薬代が高くて悩みの種です。少しでも安くすませる方法はないものでしょうか?
A2
Jean-Michel Peny.Scrip Magazine March 2003より
(但し、日本は2003年のデータ〈医薬工業協議会調べ〉)
薬代が高くて大変だと思われるときには、医師や薬剤師に相談されることをお勧めいたします。たくさん出ている薬を、少し整理して種類を減らせるかもしれませんし、複数の医療機関や診療科で処方を受けていたりするときには、処方を出してもらうところをしぼることができるかもしれません。薬をもらうときには調剤料や手数料がかかりますから、まとめてもらったほうが負担が軽減されるでしょう。
また、新薬は特許で保護され開発したメーカーが独占的に製造・販売しますが、特許期間が終われば別の会社が同じ成分の薬を出します。この薬をジェネリックといい、薬の価格は最初に出た薬よりも安くなります。薬代の負担が大きい場合は、こうした薬について使えないかどうか相談されても良いかと思います。
Q3:個室を希望しない場合にも差額ベッド代は必要?
通院で抗がん剤治療を受けていましたが、感染のため体調が悪くなり、すぐに入院することになりました。ベッドが空いていないので、仕方なく個室に入ることになりましたが、差額ベッド代の請求を受けました。個室を希望したわけではないので納得がいかないのですが、支払わなければいけないのでしょうか?
A3
資料:厚生労働省(平成13年)
ベッドが空くのを待てないほどの緊急の状態であり、差額ベッド代のかかる部屋しか空いていない場合には、差額ベッド代は減額免除されたりすることがあります。しかし、どれほど緊急の状態であるかは医師の判断によりますし、差額ベッド代のかかる部屋のご説明をした際に、患者さんご家族の同意が得られれば、減額免除の話はあまり出ないようです。
差額ベッド代のかかる部屋しかないと言われた場合で、ご費用負担が大変であれば、同意書にサインをする前に医師に事情を話して下さい。いったん同意書にサインをされますと、本人の希望・同意となり、後日の返金請求などは難しくなります。
Q4:生活保護でもセカンドオピニオンは受けられる?
生活保護を受けています。原則として1病院1疾病でなければ治療費が対象になりません。セカンドオピニオンを求められなくて不安ですが、対策はないですか。
A4
確かに生活保護法でそのように定められていますが、例えばがんの重篤な病気に罹患し、他の人のアドバイスを聞きたいという患者さんに駄目だということはあまりないようです。ただし、セカンドオピニオンは基本的に自費診療ですので、診察という形でアドバイスを受けることになりそうです。
セカンドオピニオンを求める場合は、まず生活保護の担当ケースワーカーに相談して下さい。なかなか理解してもらえないような場合には、医療機関のソーシャルワーカーに相談していただけるといいかと思います。
Q5:抗がん剤治療中に子供を預けたいが…
入園前の乳幼児を持つ母親です。毎週、抗がん剤の投与を受けることになりましたが、ベビーシッターを頼むとその費用がとても高額になります。保育園の一時預かりなど、利用できる制度はないものでしょうか。
A5
地方自治体によって、制度はさまざまです。民間のベビーシッターや保育園に日中の預かりを依頼する場合、1日1~2万円も必要なことがあります。支払いが困難な場合は自治体に相談してみると良いでしょう。例えば目黒区では生後57日~小学校就学前までの子供で、1カ月以内であれば1日(8時30分から17時まで)1200円で預けられる緊急一時保育、3~12歳の子供を1回7日以内で1日2100円で預けられる子どもショートステイといった制度があります。
Q6:医療費の分割や後払いはできる?
高額療養費の払い戻しに時間がかかるため、いつも医療費を支払う日は親戚から一時的にお金を借りています。病院で分割や後払いができるようにはならないものですか?
A6
高額療養費の戻りについては、レセプトが保険者に届いてからになりますので、診療月の2~3カ月後になります。分割や後払いができるかどうかは、病院によりますので、まずは聞いてみることです。最近では、クレジットカードが使用できる病院が増えてきていますので、カードを使っての分割払いやリボ払いといった支払方法もとれるようになってきています。
また、保険者によっては、高額療養費の貸付制度といって高額療養費を先払いしてもらえることもあります。国民健康保険に加入されている場合は、高額療養費の貸付制度以外に、高額療養費の受領委任払制度があるところもあります。これは、高額療養費を受け取る権利を病院に委任するかわりに、最初から高額療養費を差し引いた自己負担分だけの支払いですむというものです。
例を挙げてみますと、例えば健康保険の3割負担の患者さんが、30日入院して、医療費が100万円かかった場合には、3割負担で30万円。それに食事療養費が1日780円ですから、30日で2万3400円になり、合計32万3400円が病院から請求されます。高額療養費の戻りは、世帯所得によってかわってきますが、一般世帯に属される方は、この場合21万2570円となります。つまり通常ですと32万3400円お支払いされて、2~3カ月後に21万2570円戻ってくるわけです。
高額療養費の貸付制度を利用して、8割にあたる17万56円を保険者から先払いしてもらえますと、用意しなくてはならないのは、残りの15万3344円となります。受領委任払制度が使えた場合には、最終的な負担額である11万830円をご用意されればいいということになります。
Q7:夫の葬儀料を請求したいが……
夫が亡くなり葬儀をあげましたが、葬儀料に関してあとで支払ってもらえる制度があると聞きました。どのようなものなのですか?
A7
社会保険加入中や、会社をやめてから3カ月以内に被保険者または被保険者だった人が亡くなったときは、同一生計の遺族に埋葬料が支給されます。支給額は5万円です。
同一生計でない人が葬儀を行ったときは、5万円の埋葬費が支給されます。埋葬料のときには要りませんが、埋葬費の請求のときには葬儀料の領収証が必要です。国民健康保険加入中に亡くなったときは、葬祭費の支給があります。この額は2万円から7万円くらいで市区町村によって異なります。また、埋葬料、埋葬費は亡くなってから2年以内、葬祭料は葬祭を行ってから2年以内ならば請求することができます。