FP黒田尚子のがんとライフプラン 25

抗がん薬治療で脱毛したときのウィッグの費用を節約?! ウィッグの助成制度や医療割引など

黒田尚子●ファイナンシャル・プランナー
発行:2016年4月
更新:2019年8月

  

くろだ なおこ 98年にFPとして独立後、個人に対するコンサルティング業務のかたわら、雑誌への執筆、講演活動などを行っている。乳がん体験者コーディネーター。黒田尚子FPオフィス公式HP www.naoko-kuroda.com/

がん治療に欠かせない抗がん薬治療ですが、乳がん治療などの場合副作用で脱毛してしまうのは、ほぼ避けて通れません。そこで手放せないのがウィッグ(かつら)です。数千円のお手軽なおしゃれウィッグから数十万円もする高価な医療用ウィッグまでさまざまなものがありますが、今回は、ウィッグにかかる費用について考えてみました。


よく「医療用ウィッグ」と言いますが、実は明確な定義はありません。一般的には、抗がん薬治療の副作用や、円形脱毛症、外傷などの理由によって脱毛した頭部(またはその一部)をカバーするかつらという位置づけで、各メーカーが独自に製造・販売を行っています。

おしゃれウィッグとのおもな違いとしては、肌に刺激の少ない素材が使用してある。機能性や通気性に優れている。軽量で、髪の量に対してのサイズ調整がしやすいなどの特徴があります。

その費用も文字通りピンからキリまで。中には、「告知後、何もわからないままに、何十万円もするものをいくつも揃えてしまい、あとで高額な治療を行うことになって本当に大変だった」という患者さんもおられます。

乳がん患者を対象にした調査では、ウィッグの購入価格は5万円未満が4割超で、その使用期間は平均12カ月。ただし、治療から数年経ってもウィッグが手放せない状態にある一部の患者さんもいるようです。

抗がん薬治療を行ってその副作用で脱毛症状に悩む方のQOL(生活の質)維持に欠かせないウィッグですが、原則として、購入費用に対する医療費控除や保険適用などは受けられません。これらは、薬機法上、必要な医療器具ではないと判断されているためです。

それに対して、欧米では、脱毛や皮膚の変色といった外見上の変化は、患者さんのQOLを低下させ、就学や就労を阻害するものと認識されています。そのため英国やフランス、米国などでは、ウィッグは公的な保険適用の対象になっています。

ただし最近、日本でも東北地方を中心に各自治体が、ウィッグに対する助成制度を設ける動きが出てきました(図表参照)。

■各自治体のウィッグの助成制度

(各自治体のHPなどより筆者編集作成)

また、医療用かつら大手メーカーのアートネイチャー、アデランス、スヴェンソンなどでは、とくに抗がん薬治療等を受けた方に対して医療割引制度(2割引き等)を実施している場合もあります。

なお、医療用ウィッグについては、前述したように、名称や適用範囲、性能等に明確な基準がありませんでしたが、2015年4月、品質向上を目的として日本工業規格(JIS)マークが制定(JIS S 9623 クロフサ)。さらに業界団体が商品の安心・安全を示す「M・Wig マーク」も制定されています。いずれも厳しい審査基準が設けられており、医療用ウィッグで迷ったら、判断基準の1つとして参考にされてはいかがでしょうか?

出所=乳癌化学療法経験者に対する脱毛調査(渡辺隆紀:仙台医療センター)日本乳癌学会(2015年)

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