ステージ4bの膵臓がんに、未承認の抗がん剤は効くか?

回答者:上野 秀樹
国立がん研究センター中央病院 肝胆膵内科医師
発行:2009年11月
更新:2013年11月

  

ステージ4b(JPS分類)の膵体部がんで、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)単剤での治療を受けています。インターネットで、世界的には、アバスチン(一般名ベバシズマブ)やアービタックス(一般名セツキシマブ)など、膵臓がんに対していろいろな抗がん剤が使われていることを知りました。もし効果があるなら、日本で承認されていなくても、個人輸入したいと思っています。ステージ4bでジェムザール単剤での治療より大きな効果が期待できる治療法はあるでしょうか。アバスチンやアービタックスはどうでしょうか。

(埼玉県 男性 57歳)

A 新しい抗がん剤 = 効果の高い抗がん剤とは限らない

ステージ4bの膵臓がんは手術でがんを完全に取り除くことが難しいため、抗がん剤による治療が行われています。抗がん剤にはさまざまな種類がありますが、膵臓がんに対しては現在、ジェムザールが標準治療とされています。標準治療とは、簡単にいえば、その時点で最も効果が高いと考えられている治療のことです。

ご指摘されたアバスチンやアービタックスは、分子標的薬と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤です。他の種類のがんでは、これらの薬剤の効果が大規模な臨床試験によって証明されており、日常診療で使用されているものもあります。

しかし、膵臓がんに関しては、これらの薬剤の延命効果は証明されておらず、世界的にも評価は定まっていません。新しい抗がん剤=効果の高い抗がん剤とは限らず、効果が得られないばかりか強い副作用に苦しむ可能性もある点で注意が必要です。

同じ分子標的薬でも、タルセバ(一般名エルロチニブ)は、ジェムザールとの併用で延命効果が示されており、膵臓がんに対する使用が米国では認められています(日本では膵臓がんに対して未承認)。しかし、生存期間の改善がそれほど大きくなかったことから、副作用の少ないジェムザール単剤療法が依然広く行われています。

ご質問された方は現在、標準治療のジェムザールを受けていらっしゃいますので、定期的に検査を受け、がんの悪化がなければ、この治療を続けることをお勧めします。未承認の薬剤を臨床試験以外の方法で使用することは、安全性の面でも問題があり、推奨できません。

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