マントル細胞リンパ腫と診断。VR-CAP療法とはどんな治療法か

回答者・岡元るみ子
千葉西総合病院外来化学療法センター長/腫瘍内科部長
発行:2016年4月
更新:2019年8月

  

74歳になる父のことで相談です。 先日、マントル細胞リンパ腫(MCL)と診断され、主治医からVR-CAP療法という治療を行う方針だと説明を受けました。VR-CAP療法とはどのような治療法になるのでしょうか。年齢的なこともあり、父が治療に耐えられるか心配です。

(43歳 女性 大分県)

自家移植の対象とならない患者で 良好な成績を出した治療法

千葉西総合病院外来化学療法
センター長の岡元るみ子さん

マントル細胞リンパ腫は、月単位で病状が進行する、中悪性度のB細胞リンパ腫です。65歳以下で全身状態(PS)がよい人であれば、強い化学療法で効果が認められたあと、自家移植が行われます。一方、自家移植の対象とならない人に対して開発されたのが、VR-CAP療法です。

VR-CAP療法はベルケイド、リツキサン、エンドキサン、アドリアシン、プレドニンの併用療法です。自家移植の対象とならないマントル細胞リンパ腫の患者さんを対象に、R-CHOP療法とVR-CAP療法の無作為化比較試験が行われたところ、無増悪生存期間(PFS:がんが悪化するまでの期間)は、R-CHOP群11.4カ月、VR-CAP群24.7カ月と大きな差がつきました。この結果を受けて、それまで多発性骨髄腫の治療に使われていたベルケイドの適応拡大が行われ、昨年(2015年)6月よりマントル細胞リンパ腫でも用いられるようになりました。

VR-CAP療法の副作用としては、まず好中球減少による感染症があげられます。手洗い、うがいをきちんと行うことが大切です。また、血小板減少にも注意が必要です。治療開始後10~14日目に最も起こりやすく、必要に応じて輸血が行われることもあります。他にもベルケイドによる末梢神経障害、いわゆるしびれも起きてきます。約3割の患者さんに出ており、「中等度の症状があり、身の回り以外の日常生活動作(ADL)が制限される」状態になれば減量、「高度な症状があり、身の回りの日常生活動作が制限される」状態になれば、休薬して対処します。それでもしびれがひどい場合には、ビタミン薬、疼痛治療薬リリカ、抗うつ薬、医療用麻薬などで対応します。

また、帯状疱疹が発症しやすいので抗ウイルス薬の予防投与、ニューモシスチス肺炎の予防として抗菌薬の投与、他にもB型肝炎ウイルスのチェックを行い、必要に応じて抗ウイルス薬の投与を行います。

VR-CAP療法は血小板減少が起こりやすいため、1コース目の治療開始時は経過を見るために入院が望ましいのですが、その後外来での治療が可能と判断されれば、通院治療も可能です。お父様のようにご高齢の方を対象にした臨床試験で、VR-CAP療法は良好な治療成績が出ています。以上の点に気をつけて、頑張って治療を受けられて下さい。

ベルケイド=一般名ボルテゾミブ 高度な症状があり、身の回りの日常生活動作が制限される状態=例えば、ボタンが留めづらくなる、ペットボトルのふたが開けられなくなるなどの状態を指す リリカ=一般名プレガバリン

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