2013年4月
脳腫瘍の一種である神経膠腫は、腫瘍の周囲に浸み込むように広がり、境界が不鮮明なため、手術で完全に取り切るのは困難です。そこで、取り切れずに残った腫瘍細胞を治療するため、脳内に留置してくるタイプの抗がん薬「ギリアデル」が登場しました。手術時に切除した部位に薬を留置すると、その後約2週間にわたり、じわじわと薬を放出し続けます。後遺症を防ぐと腫瘍を取り切れない神経膠腫は、手術で完全に取り除くのが難しい脳...
2013年3月
ベルケイドは、多発性骨髄腫の治療において、再発または難治性だけでなく、未治療の患者さんにも使える薬剤として、切れ味のするどい効果が評価されてきました。反面、問題となっていたのは、副作用の末梢神経障害。そこに2013年1月、新たにこの薬の皮下投与が承認されました。従来の静脈内投与に比べ、末梢神経障害が軽くなることがわかっており、新たな選択肢として期待されています。未治療患者さんにも使えるただ1つの新...
2013年2月
イホマイドはこれまで、小細胞肺がんや前立腺がん、子宮頸がん、骨肉腫、そして再発または難治性の胚細胞腫瘍などの治療に使用されてきました。2012年3月、イホマイドに新しく悪性リンパ腫への効能が追加されました。小児がん学会などからの要望がかなえられたものです。これにより、成人および小児の悪性リンパ腫治療の現場への貢献が期待されています。海外では標準治療と位置づけられるイホマイドイホマイドを含む治療レジ...
2013年1月
「分子標的薬の登場で個別化医療が進みました」と話す久保田さん 現在、さまざまながん種で使われることの多くなった分子標的薬ですが、治療効果が期待できる反面、特有の副作用が起きることがわかっています。今後、どのように分子標的薬を使っていけばいいのでしょうか。がん細胞のもつ特定の分子を標的にする■図1 抗がん薬と分子標的薬の違い抗がん薬は標的を定めず、分裂増殖が盛んな細胞全体を攻撃するが、分子標的薬はが...
2013年1月
「抗がん薬に多くの種類があるのは、がん細胞がさらに多様だからです」と話す矢形 寛さん 抗がん薬治療を受ける患者さんには、化学療法への理解を深め、納得できる治療を、安心して受けていただきたい。ここでは、抗がん薬の基礎知識について、初めて抗がん薬について知る患者さんにも、わかりやすく解説する。Q1 抗がん薬ってどんな薬なの?抗がん薬は広く細胞に障害を与えるもので、自然界から抽出したり、さまざまな物質か...
2013年1月
個々の患者さんでその薬が効くか効かないかを予測する「個別化医療」の研究も進んでいると話す今村知世さん がん治療において欠かせない抗がん薬。服用した薬剤が胃を通って腸で吸収された後、どのようにがんに作用しているのか。実は知らないことも多いのではないだろうか――。細胞分裂をじゃまする■図1 殺細胞薬ががん細胞の分裂をさまたげる仕組みがんの増殖を抑える効果がある一方で、さまざまかつ強い副作用を伴う薬。抗...
2013年1月
悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)に対する新たな薬剤が、2012年の9月に厚生労働省から承認されました。分子標的薬のヴォトリエントです。国内に3000人という希少ながんですが、国際的な多施設共同臨床試験が行われ、米国では2012年4月に、欧州では8月に、化学療法の治療歴のある進行性悪性軟部腫瘍の患者さんに対して認可されました。手術ができない場合の治療に期待の新薬■図1 ヴォトリエントの効果悪性軟部腫瘍は筋肉...
2012年12月
近年、新薬の登場で、転移性腎細胞がんの薬物療法は変わり続けてきました。今年は、新たな分子標的薬「インライタ」が登場。2次治療の臨床試験では、がんが悪化しない期間(無増悪生存期間)でも、腫瘍を縮小する効果を示す奏効率でも、インライタが従来の薬剤であるネクサバールを上回りました。この薬の登場で選択肢が増え、腎細胞がんの2次治療が変わります。細胞の増殖や血管新生を強力にブロック腎細胞がんの治療は手術が基...
2012年11月
米アップル社のスティーブ・ジョブズさんが罹患したことで知られる「膵神経内分泌腫瘍」は、最近まで有効な治療薬がありませんでした。日本では、昨年末にようやく膵神経内分泌腫瘍を適応症とする治療薬「アフィニトール」が登場しました。病名の認知度向上など、この病気を取巻く課題は山積ですが、治療の選択肢が広がったことは患者さんにとって朗報です。ホルモンを分泌する膵臓内の細胞にできるがん■図1 膵内分泌腫瘍とは膵...
2012年10月
肝がんには、肝動脈化学塞栓療法という治療法があります。肝動脈にカテーテルを送り込んで、がんの近くから抗がん剤を注入した後、ゼラチン粒などの塞栓物質で血流を遮断する治療法です。がんを抗がん剤漬けにし、さらに新たな血液が流れ込まないようにするのです。この治療のために開発された抗がん剤「ミリプラ」は、がんに長くとどまることができ、じわじわと効果を発揮します。肝がんを対象に行われるカテーテルを使った治療[...