2012年7月
昨年、閉経後の進行・再発乳がんのホルモン療法に新薬が登場しました。 この薬は、既存のホルモン剤と異なる作用も備えているため、腫瘍の増殖や転移を防ぐ効果が期待されています。同時に、薬剤耐性を生じにくい可能性をもつ薬剤として、すでに別のホルモン剤による治療を受けた患者さんの2 次治療として、有力な選択肢となっています。 閉経後ホルモン療法の2 次治療に新たな選択肢大部分の乳がんはがん細胞内にエストロゲ...
2012年6月
消化管神経内分泌腫瘍は、特徴的な症状がなく、比較的まれな疾患であるために診断が遅れることがあり、腫瘍が発見されたときには進行・転移していて、治療の第1 選択である手術ができないということも少なくありません。 サンドスタチン LARはこのような手術ができない患者さんに対する進行抑制効果が確認された、はじめての薬剤です。有効な治療がなかった進行性神経内分泌腫瘍サンドスタチン LARの有効成分であるソマ...
2012年5月
カイトリルは発売からすでに20年の歴史をもつ制吐薬で、これまでは主に抗がん剤治療に伴う悪心・嘔吐を抑える薬として活躍してきました。そこへ、昨年12月、この薬の新たな適応として、放射線照射に伴う悪心・嘔吐が加わったのです。 これまで適当な制吐薬がなかったこの分野に光が当たり、放射線治療を受ける患者さんのQOL向上が期待されています。放射線治療で使えるようになったカイトリルは新しい薬ではありません。こ...
2012年3月
骨髄異形成症候群(MDS)は、一部の患者さんで白血病へ移行する難治性の疾患です。日本では難病に指定され、約9,000人の患者さんがいます。完全治癒を目指すには骨髄移植が唯一の方法であり、移植ができない場合は症状緩和を目的に、輸血や抗がん剤などの治療が行われます。新しく登場したビダーザは、骨髄異形成症候群の生存期間を延ばした初めての抗がん剤として注目されています。正常な血液細胞が減少する骨髄異形成症...
2012年2月
大腸がんや肺がんに使用されていたアバスチンが、転移・再発乳がんでも適応を取得しました。海外の臨床試験では、がんの進行を抑えた期間(無増悪生存期間)がこれまで使用されていたタキソールに加えると約2倍に延びたという結果が得られています。さらに、これまで決め手がなかったトリプルネガティブやホルモン剤無効後のホルモン陽性乳がんへの効果を示す結果も出ています。転移・再発乳がんに適応を拡大アバスチン(*)は、...
2012年1月
トレアキシンが使われるのは、悪性リンパ腫のなかの「低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫」と「マントル細胞リンパ腫」に対してです。腫瘍を縮小する効果が強く、完全寛解率が高いのが特徴で、国内で行われた臨床試験で、無増悪生存期間が延びることが確認されました。標準的治療を受けて再発した患者さんや、標準的治療が効かなかった患者さんの治療として、注目されています。東ドイツで開発された古くて新しい抗がん剤トレアキ...
2011年12月
悪性リンパ腫の1種である「皮膚T細胞性リンパ腫」は、患者数が少ないこともあり、わが国では新しく開発される薬がほとんどありませんでした。希少疾病医薬品に指定されたゾリンザは、他の抗がん剤にはない特有の作用をもち、この難治性の病気に効果を発揮します。治療法がなかった患者さんにとって朗報です。悪性リンパ腫の1種で患者数は非常に少ない今年の7月にゾリンザ(*)という新しい抗がん剤が承認され、9月に発売にな...
2011年11月
これまで、抗がん剤の副作用による手足のしびれや痛みに対しては、決定的な治療法がありませんでした。リリカは、このような、末梢神経障害による痛みに対して効果が認められた、世界初の薬剤です。リリカの登場により、痛みの治療の選択肢が広がりました。痛みを早期に発見、早期に対処すれば、痛みを気にすることなく、本来のがんの治療に立ち向かうことができるのです。末梢神経障害による痛みに有効な、世界初の薬剤痛みには2...
2011年10月
未承認薬や適応外薬を使った がん治療に積極的に 取り組んでいる 今村貴樹さん 世界で標薬として使われているが、国内では未承認という薬は少しずつ少なくなってきている。 その一方でクローズアップされているのが、ある疾患には使えても別の疾患には使えない"適応外薬"の問題だ。 「使いたくても使えない薬」を使えるようにするには──。 縮まってきたドラッグラグ未承...
2011年10月
手術不能・再発乳がんの患者さんに対しては、現在、標準治療とされているアンスラサイクリン系抗がん剤やタキサン系抗がん剤を使用し、効果が得られなかった、もしくは再発してしまった場合、これまでは「確実な次の一手」がない状況でした。2011年7月に発売されたハラヴェンは、この「次の一手」となる乳がんの新しい抗がん剤として大いに期待されています。生存期間を延長し、副作用は従来と変わらず [エリブリン単剤治療...